特集「緩み止めコーティング」 技術の多様化が進む

2025年3月3日

 「緩み止めコーティング」を特集する。ファスナーの緩み止めコーティング市場は大きな転換期を迎えている。エポキシ系接着剤の代表的製品のひとつであった3M製Fastener Adhesive(SGシリーズ)が2023年9月に生産終了したことにより、同剤を使用していた加工サプライヤーは代替品の選定と加工技術の確立に追われた。市場では緩み止めコーティングの多様化が進む契機となり、各社が独自の強みを活かした対応を進めている(4~6面に特集記事)。
 緩み止めコーティング市場は、エポキシやアクリルなどを用いたマイクロカプセル型接着剤や、ナイロンやシリコンなどを用いた弾性型のプレコート製品が主流となっている。今回の代表的製品の生産終了にともない、国内外の多様な緩み止めコーティングが市場での存在感を高め、加工サプライヤーはこれらの製品を活用し、量産体制の確立を進めてきた。
 加工サプライヤー各社は、代替品の性能評価を行い、従来品と同等の品質を確保するための技術開発を進めている。独自の薬剤調整技術を用い、従来品と同等の性能を実現した例もある。また、この機会に新たなコーティング技術を導入し、耐久性や作業効率の向上を図る企業も見られる。
 一方、ファスナーメーカーなどユーザー側も代替品の選定を慎重に進めてきた。従来品の在庫を確保しつつ、代替品の導入テストを進め、品質管理や生産ラインへの適用を進めた企業が多い。特に、自動車、航空宇宙、精密機器業界では、緩み止め性能の安定性が求められ、緩み止めコーティング各種の真価が問われる局面となった。
 さらに、緩み止めコーティング技術の多様化が進む中で、ナイロン・シリコン樹脂系の繰り返し使用可能な特性や機械的緩み止め性能の再評価、粘着性樹脂を活用した切粉捕捉技術など、用途に応じた新たなアプローチも登場している。これにより、ユーザーの選択肢は広がり、特定用途に最適な緩み止め技術の採用が加速している。
 市場全体として、より高性能かつ環境対応型の製品が求められる傾向が強まっている。ファスナーメーカーは、顧客ニーズに対応しながら、より安定した供給体制の構築を進めており、今後の市場動向が注目される。