EUの炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism、以下CBAM)への対応にともない、対象製品となるねじ・ボルト向けのCBAM対応排出量算定ガイドラインが、経済産業省から公開される。これに先立ち同省の公募を受けて、ねじ業界を調査してガイドライン案を作成している㈱野村総合研究所(以下、NRI)が2月19日に第3回オンライン説明会を開き最終的にまとめたガイドライン案を解説した。
CBAMは対象製品をEU域外から輸入する際にEU排出量取引制度(EU ETS)に基づいて課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるもので、EU域内の企業が環境規制の緩いEU域外へ製造拠点を移転するなどのカーボンリーゲージを防ぐことが目的となっている。対象製品には鉄鋼製ねじ・ボルト類(CNコード7318―)とアルミニウム製(CNコード76161000―)のねじ類が含まれている。昨年10月1日より移行期間が適用。今年1月末が輸入者の最初の報告期限(その後EUより延長期間が設けられた模様)となり、2026年に正式発効する見込みとなっている。
日本から欧州への輸出量の多いねじ類(2022年度)の上位3品目は「鉄鋼製ボルト(ステンレス鋼製のものを除く)」、「鋼鉄製のナット(ステンレス鋼製のものを除く)」、「セルフタッピンねじ」だった。
ねじ・ボルトは鍛造/圧造から転造、切削、表面処理など工程単位で外注先への発注が多く介在するケースがあり、1つのねじメーカーでも工程によって工場が異なるなど必ずしも一つの工場で完成品を製造しているわけではない。CBAMではある程度の算定の単純化を認めており、同じCNカテゴリの製品を作っている外注先も含めた工場(Instration)、生産工程(Production Process)をそれぞれ一つに括って算定して良いという見解をガイドライン案は示している。解説資料によると「ねじ製造工程を大くくりに捉え、ねじ・ボルトの出荷責任を負う製造者を基点に、線材を前駆体に、一部工程の外注先は、同一Installation相当と見なして、自社排出量のみを出荷責任を負う製造者に報告する」との見解だ。
説明会ではこれまでNRIがまとめたガイドライン案の要点の再掲と新たに加筆した要点の解説があり、ガイドライン案の最新版も受講者に公開された。今後は経済産業省より算定ガイドライン正式版が近く公開される見込みだ。
なお解説されたガイドライン案は現時点で検討段階のものであり、CBAMに完全に適合することを保証するものではないとしている。