(一社)日本ねじ工業協会(佐藤義則会長=㈱サトーラシ)は、昨年12月に材料価格等値上げの製品価格転嫁問題に関するアンケート調査結果をウェブに公開した。これによると、昨年度に経営への影響が大きい材料値上げを経験したと回答した企業は9割にのぼった。また一部の値上げを認めてもらったが不十分であると回答した企業が5割にのぼった。
アンケートは今回で2回目となる。アンケートの調査期間は昨年10月11日~31日。ねじ協会員71社(回収率50%)より回答を得た。回答企業の主要取引先と商流のウエイト(複数選択可)は、「①1次請け直納」が29%、「②2次、3次直納」が29%、「③商社経由」が41%、「④その他」が1%だった。
調査結果によると、昨年度(2022年4月~23年3月)の材料値上げの経営への影響を聞いたところ、92%(65社)の企業が「経験した。且つ経営への影響が大きいものだった」と回答した。「経験したが経営への影響は軽微だった」の回答は8%(6社)だった。値上げ材料の種類は「鉄」が67社、「非鉄」が30社、「その他」は9社の回答。「その他」の回答の中には副資材の値上げの経験もあり、鉄・非鉄を中心に資材全般の値上げ攻勢が及んでいると分析している。
本年度(2023年4月~23年9月時点)の材料値上げの経営への影響を聞いたところ、40%(25社)の企業が「経験した。且つ経営への影響が大きいものだった」と回答した。「経験したが経営への影響は軽微だった」の回答は32%(20社)。「その他」の回答は29%(18社)だった。値上げ材料の種類は「鉄」が44社、「非鉄」が17社、「その他」は9社の回答。「その他」の中には表面処理など外注費の上昇の影響が大きくなっていた。
本年度は、昨年度に比べて経営への影響がある材料値上げを経験した企業は半減した。一方で影響が軽微だったとする回答は32%に上昇して値上げ幅も縮小傾向だった。主要ユーザー別企業で見ると、自動車と建築については昨年度に経営への影響が大きかったが本年度で影響が半減した。店売りや商社、建機、鉄道がユーザーの企業は経営への影響が少なかったと分析している。
材料調達の現状の問いについては、「①自己調達」が72%(47社)、「②納入先による集中購買(支給材料)」が2%(1社)、「①と②両方」が26%(17社)だった。
経営に影響を与える製造コスト上昇要因の問い(複数選択可)については、「材料値上げ」が80%(57社)、「関連資器材の仕入れコストの上昇」が76%(54社)。「電気・ガス等エネルギーコストの上昇」は93%(66社)と最も多く、「物流コストの上昇」が66%(47社)、「人件費の上昇」が69%(49社)だった。分析では、最近の材料、エネルギー、物流、人件費などのコスト上昇が経営に影響を与えていることが明確になったと指摘している。
製品値上げ交渉の現状の問いについては、「①製品値上げを提案し交渉した」と回答した企業は87%(62社)だった。「②検討したが具体的に提案するまでに至っていない」の回答が7%(5社)。「④集中購買材の値上げ分を製品価格に転嫁してもらうので問題ない」は3%(2社)で回答した企業の主力ユーザーは自動車だった。「③提案できない」は1%(1社)だった。
製品価格値上げ交渉の結果の問いでは、「①交渉して値上げを認めてもらった」が40%(34社)、「②一部の値上げを認めてもらったが不十分である」が49%(42社)、「③値上げを認めてもらったが、その後発注量が減るなどの影響が出た」が3%(3社)、「④全く回答をもらっていない」が5%(4社)、「⑤値上げできない旨の回答があった」が3%(3社)だった。分析では、一部の値上げを認めてもらったが不充分と感じている企業は平均で49%もあり、特に主力ユーザーが自動車の企業は58%と高いウエイトだった。
分析によると、回答の意見の中には、発注転換などをチラつかせる交渉など、買い手優位の論理が感じとれると指摘。最終ユーザーが最終製品製品価格への転嫁には消極的であるとの意見もあったとした。また、集中購買と自己調達材の価格差は認めない/長引く交渉が決着しても遡及改訂をしない/あるいは交渉の引き延ばしなど、当面の問題を先送りされているという意見があったとした。交渉する側も、商流の階層構造が深く、最終ユーザーと直接交渉ができない立場にある企業が多いことがわかると指摘している。