本紙が夏季特集号に実施したアンケート調査によると、今年度に例年より高い賃上げを実施した企業は半数を超えた。脱炭素への取組みについては実施、または予定している内容に「省エネルギー」が多数を占めた一方で、実施するにあたって「コスト問題」を課題に挙げる企業が多かった。(前号に関連記事)
質問B①2023年度の給与改定において賃上げを実施したかを社名非公開で聞いたところ、「例年より高い賃上げを実施」が55・4%(102社)となり半数を超えた。次点の「例年通りの賃上げのみ実施」は29・9%(55社)を含めると合計で8割強にのぼった。
「賃上げは実施しなかった」は5・4%(10社)、「賃上げは実施せずその他手当を支給」は3・8%(7社)、「例年より低い水準で実施」が3・3%(6社)、「その他」は2・2%(4社)と少数派にとどまった。
各社、材料高騰にともなう価格転嫁を進めている一方で値上げが買い手側から100%認められないといったケースも見られ利益の落込みが見込まれていたが、政府主導による大手企業からの賃上げムードにともない、また人材の流出を防ぐといった観点からか例年よりも高い賃上げを実施した企業が多かったと推測できる。今後は同水準の賃上げを継続して実施できるかが注目される。
質問B②では、今後求められてくる企業の脱炭素について実施、または予定の取組みを聞いた。
最多回答は「省エネルギー」(111社)で圧倒的な数を占めた。次いで多い回答に「再生可能エネルギーの利用」(53社)と「リサイクル」(40社)があり、このほかに「環境製品の生産/販売」(31社)、「エネルギー以外の資源消費削減」(28社)、「次世代自動車の導入」(27社)、「リサイクル製品の使用」(23社)といった回答がほぼ同水準で並んだ。コロナ禍で取組みの多かった「人の移動の抑制」(6社)、大手企業で先行している「グリーン投資」(4社)は少数派だった。
質問B③では脱炭素に取り組むうえで課題を聞いた。圧倒的な回答数を占めたのが「コスト問題」(103社)で、各社が脱炭素の取組みに踏み切るうえでの現実的な課題が改めて浮き彫りになった。同様に「収益とのバランス調整」(66社)も回答が多く、本業の収益活動に対しての障壁になるとの見方が伺える。その他の回答として「補助金・給付金の拡充」(38社)、「専任人材の確保」(34社)、「従業員の理解」(25社)、「省エネ法等の理解」(25社)の回答も目立った。
上記の回答から、脱炭素やカーボンニュートラルといった企業活動が経営戦略上のメリットを如何に押し出していけるかが課題として見える。例えば先行して取組む企業が優先的に受注を獲得できる枠組み、品質やコスト競争にも勝る選択基準のひとつとしてユーザー側に広く浸透するかが鍵となりそうだ。