ねじ研、「ねじ大学校」が開校 第1期生6名が入学

2022年10月17日

 (一社)日本ねじ研究協会(ねじ研、澤俊行会長=広島大学名誉教授)は、業界をリードするねじのエキスパートを養成する初の教育プロジェクト「ねじ大学校」を9月より開校した。一期生となる6名の入学者が決定。9月2日に入学式がオンラインで行われた。
 ねじ大学校は、ねじを研究する若手を育てる大学の研究室が少なくなっていることから、ねじ研が指定する講習科目を経てエキスパートを育成していく同会初の教育プロジェクト。2022年度より初めて実施される。今年7月に入学試験が行われて企業出身者で第一期生となる技術者コース6名の入学が決定していた。同6名は、ねじメーカーや自動車関連、計測機器メーカー等に所属している。
 9月2日にオンラインで行われた入学式で、澤会長は国際競争力を持つ人材を育成するために近年注目されているSTEM教育(科学・技術・工学・数学)のレベルや論文数、また博士号取得者数において日本は世界から引き離されている危機感を示して、これまでの日本の教育のベースだった知識供与型の教育から探求型へとシフトしていく必要性を指摘。同会においても主要な委員会の委員長をアカデミア(学識者)から企業人へとシフトさせて「これからは企業人が自分達のためにやるシステムが必要」と訴えた。最後に入学者に向けて「正解のない答えを解く力を。高度な領域で戦いをやろう。ねじ大学校でマスターしてキャリアをアップすることも人生だ」と祝辞を送った。
 入学者代表として㈱佐賀鉄工所(佐賀県)開発部の井上有己氏は要旨次のように挨拶した。
 「近年では産業科学技術の発展とともに、ねじ自体も著しく進化している。耐ゆるみや耐かじり、高強度化、小型化、高耐食性の付与、非金属化、軽量化など様々な付加価値も持つ製品が表れている。我々6名はこの過渡期の中で生き残っていかなければならない。ねじに求められる技術を向上していくためには工学や化学、様々な分野の高度な知識が必要とされている。我々は業種が違うが、時代の流れに立ち向かうため高度な知識が必要であることは全員の共通認識だ。カリキュラムの受講でキャリアをブラッシュアップしていくとともに、日本の産業に知識を還元できる存在になりたい」―。
 入学者は指定する28の講習を2年間で受講して、全168単位のうち最低70単位を取得する必要がある。更にねじ研委員会活動に参加して、認定テーマで研究してねじ研協会誌に論文を発表する。必要単位数を取得して卒業試験に合格すると、卒業証書としてMFT(Master of Fastening Technology)の称号が授与される。
 技術者コースの講習プログラムは「A・ねじの使い方」「B・ねじ試験実習」「C・ねじの作り方」の3つのカテゴリーで構成。
 必須科目のひとつである「ねじ締結技術セミナー」(8単位必須、10月開催)は、東京都立大学の晴山蒼一教授をコーチ・講師に機械振興会館にて開講。同セミナーでは▽ねじの基礎(A規格、B国際標準化)▽ねじの設計(C締結の基礎、Dねじの締結体設計と留意事項、E静的強度F外力と内力の関係)▽製造(Gねじ製造、H周辺製造技術)▽組付けガイドライン(I組付け基本技術、Jねじ込みシステム、K締付け管理)▽信頼性向上(Lゆるみ、M疲労と遅れ破壊)―を学ぶ。
 同日は入学式と併せてオリエンテーションも行われ入学者に今後の講習計画も解説された。