下請け取引における「買いたたき」など悪質な事業者に対する監視が強化される。中小企業庁と公正取引委員会は、5月20日から下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づいた検査を通じて法令違反を繰り返すなどの再発防止策が不十分と判断された事業者に対して、指導を行う際に取締役会の決議を経て改善報告書の提出を求めていくこととした。
この処置は昨年12月に政府や関係省庁が共同で取りまとめた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(以下・転嫁パッケージ)の中で掲げられた取組みのひとつ。
転嫁パッケージは、原油価格の上昇や円安の進行によるエネルギーコストや原材料価格の上昇が懸念されることから、取引事業者全体のパートナーシップにより労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるように、内閣官房をはじめ消費者庁、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、公正取引委員会が取り組む内容をまとめたもの。
この中で価格転嫁円滑化に向けた法執行の強化を掲げており、関係省庁からの情報提供や要請で下請け事業者が匿名で「買いたたき」などの違反行為を行っていると疑われる親事業者に関する情報を公正取引委員会や中小企業庁に提供できるウェブシステム「違反行為情報提供フォーム」を設置して広範囲に情報提供を受け付けることが明記されている。
また公正取引委員会は、下請法の適用対象とならない取引についても、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引は、独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当するおそれがあることを明確化する。またこれら転嫁拒否が疑われる事案については立入調査を行う。
「買いたたき」の解釈については次の通り明記されている。
▽労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりの取引価格に据え置くこと▽労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を文書や電子メールなどで下請事業者に回答することなく、従来どおりの取引価格に据え置くこと―。
転嫁パッケージでは「買いたたき」についてこのほか、違反行為を行っているおそれが強い事業者へ書面調査の回答(30万件程度実施)に加えて、過去の指導・勧告の情報や関係省庁が保有する情報などを一元的に管理できるシステムを公正取引委員会に新たに構築するとしている。