経済産業省はウクライナ情勢や原油価格高騰などに影響を受ける中小企業や小規模事業者を支援するために、親事業者に対して下請事業者等への配慮について要請文書を4月28日付で発出した。
要請文書は経済産業大臣と公正取引委員会委員長の連名で関連1700事業団体を通じて発出。文書ではエネルギー価格や原材料費の高騰している状況下で「適切な価格転嫁等により、サプライチェーン全体でコストを負担していくことがますます重要」としている。昨年12月27日の閣議了解で掲げられた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づいて、政府が下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)の「買いたたき」や、公正取引における「優先的地位の濫用」の執行強化などで中小企業の適切な価格転嫁に向けた取組みを進めているとした。このため関係団体の会員企業とその経営者、さらに営業・調達の担当役員や管理職へ下記の周知を要請している。
「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」で、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引が、下請代金法上の「買いたたき」や独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当するおそれがあると明確化している。また下請中小企業振興法に基づく「振興基準」では、「原材料費、市価の動向等の要素を考慮した合理的な算定方法に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、下請事業者及び親事業者が協議して決定するもの」としている。このことから、下請事業者から価格交渉の申出があった場合には積極的に応じ、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を考慮した上で、十分に協議を行い、取引対価を決定するなど、適切な価格決定を要請する。
特に直近で急激に価格が上昇している原材料等を使用して製品等を製造している下請事業者に対しては、当該原材料等の価格上昇分を取引価格に反映するため、通常の価格改定の時期を待たずに積極的に協議を行うことを要請する。
中小企業へのアンケートやヒアリングを実施する。この結果から、価格転嫁への取組状況が悪い個別事業者に対し、下請中小企業振興法第4条に基づく指導・助言を実施する。5月の連休明けにアンケート票が届いた中小企業は積極的な回答を要請する。
公正取引委員会は、転嫁拒否が疑われる事案が発生していると見込まれる業種について、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査を実施する。今後、10万社程度の書面調査を開始して、転嫁拒否が疑われる事案について立入調査を実施して懸念事項を明示した文書を送付していく。
また公正取引委員会は、同委や中小企業庁が設置する価格転嫁に関する相談窓口などに寄せられる情報を活用して、独占禁止法及び下請代金法違反行為に対して厳正に対処していく。
部品等について世界的な供給不足が発生する中、過度な買い占めや、それに伴う受発注拒否等が懸念される。取引先との間で、在庫の状況や、将来的な生産・調達見通し等について十分に情報共有を行うなど、サプライチェーン全体で生産活動が円滑に行われるよう取り組みを要請する。
部品等の供給が遅延していることに伴い、納期が長期化せざるを得ない取引においては、納品後の一括払い以外にも、工程や段階に応じた支払いとするなど、下請事業者の資金繰りにも特段の配慮を要請する。