Fastener Fair Global展で感じられたインド企業の存在感

2025年4月21日

 世界最大級のファスナー専門展として知られる「Fastener Fair Global」が先月25日から27日にかけてドイツ・シュトゥットガルトで開催された。会期中は世界各国から1000社・団体が展示を行い、訪れた業界関係者と交流を交わす場となった。同展を含め国際展ではファスナー業界を取り巻くトレンドを感じられる絶好の場となるが、今回の同展ではインド企業の存在感が以前よりも増していたように感じられた。
 あるインドの関係者は取材の中で中国・台湾の地政学的リスクが高まっていることからインド企業への引き合いが増えている旨話していた。また、別のインドのねじメーカーも同じく中国を避ける形で引き合いが増えていると説明した上で「これから何が起きるのか、具体的に何が起こっているのか誰も分かっていない」と話していたのが印象的だった。仮に中国を避ける動きがあったとして確実な流れによるものではなく不安に突き動かされた動きであることが印象づけられた。現実的には中国・台湾といったねじ生産大国に代わる調達先を探すのは難しいだろう。別の日にあるドイツの大手ねじ卸にこれらの動きを念頭に置きながら東欧など他の地域での代替可能性についてどのように考えているか質問したところ、アジア地域に代わる生産能力を持つ地域は他に存在しないと明確に話していた。
 インドはここ最近日本でも自動車メーカーの進出が本格化しており、かつてタイへ多くの日系企業が進出していったように今後関連サプライヤーについても進出の動きが本格化していくものと思われる。業界関連企業でも一部進出の動きが見られるほか、輸入という点においても国内の一部でインド製のねじが流通しているとの話が聞かれている。米国が保護主義へと大きく舵を切った今、また米国が中国に対して引き続き厳しい姿勢で臨んでいくことが予想されるという政治的背景もありインドの存在を避ける通ることはできないだろう。
 なおインドは中国とは表面的には大きな対立関係にある訳ではないが、政治的には国境問題を抱えているほか経済面でも中国製品の流入に警戒感を示している模様だ。業界に関連するところだと同展を取材している中でインド標準規格(BIS)の導入による認証義務付けや昨年1月に安価な鋲螺・ボルト類に対して輸入規制を設けたのは中国を念頭に置いた措置ではないかといった話があった。ねじ業界を含む日本の産業界は今後インドという新たなプレイヤーを念頭に置きながらビジネスを進めていく必要がある。そして世界市場を俯瞰した上で日本のねじがどのようなマーケットを開拓できるのか考えていく必要があるだろう。

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