“ディール”を前に、国益守る外交を

2025年2月17日

 25年も2月中旬を迎える中、日本をはじめ世界各国は就任前から予期されていたように米大統領のトランプ氏に振り回されている。トランプ氏は第一次政権の時と同様に関税を交渉カードに使いながら自国の要求を呑ませる“ディール(取引)”を軸とした外交を積極的に行っているが、就任演説の際「アメリカを第一に考える」と宣言した通り自国の要求を通すためには他国との信頼関係を損なうことも厭わない姿勢でディールを仕掛けている。同じく同氏は就任演説で「領土を拡大し、新たな地平に国旗を掲げていく」と宣言しているがこれまでの振る舞いを見てもこの発言は何か抽象的な目標について述べているものではなく、グリーンランドやパナマ運河、更にはガザ地区といった実際の領土について積極的に関心を示しており地域の不安定化に拍車をかけている。
 事前に懸念されていた通り米国と中国との間では早くも貿易摩擦が再燃しており、今後景況感にマイナスの影響をもたらすことが予見されている。アメリカという超大国がなりふり構わず自国第一主義に突き進む中、日本はこの自国の利益を優先すると公言している「同盟国」を前に関係を維持しながら自国の利益を守る必要がある。米国が日本に対してどのようなディールを持ち掛けてくるのか定かではないが、2月上旬に行われた日米首脳会談では対日貿易赤字についての言及はあったもの厳しい要求を突き付けられることはなく、概ね友好ムードで終える格好となった。滑り出しとしては良い形となったがトランプ氏の対応が今後どのように変わるかは全く不透明でこの難局に臨む我が国のリーダーには米国に対して両国の信頼関係を損なわないためにも自制を求めながら落としどころを見つけるという繊細な舵取りが求められる。
 一方で景況感については不透明感が増す世界情勢とは裏腹に年明け以降も低空飛行の状態が続いている。今月5日に大手信用調査会社が発表した25年1月の景気動向調査によると景気DIが3カ月ぶりに悪化したとの結果を公表している。また同調査の結果によれば(25年1月の結果は)値上げの影響が現れた23年1月以来2年ぶりの下落幅になったとしている一方でインバウンド需要は引き続き好調で自動車部品生産の復調が好材料となったとしており、今後については横ばい傾向で推移するとしている。明るい材料が見られない中、物価上昇や人手不足といった企業にとっての悩ましい課題は残ったままであり各企業は世界経済の動向を注視しながら足元の問題を解決していく必要に迫られている。必要に応じてロボットや生成AIといった次世代の技術を取り入れながらこの“昭和100年”を乗り越えていきたい。

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