印の課題と生産移管が進むASEAN

2024年12月9日

 日本企業の海外進出が多岐にわたる中、日本貿易振興機構(ジェトロ)が11月28日に発表した「2024年度海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」の調査結果(1面に関連記事)は、インドにおけるサプライチェーンマネジメントの課題も浮き彫りにしている。現地調達の進展は注目される一方、品質や技術力の課題が見られる。また、チャイナリスクの回避を契機としたASEAN諸国への生産移管の動きも注視される。
 インドは現在、現地調達率が5割を超え、地場企業が全体の75・6%を占めるなど、調達先としての存在感を高めている。しかし、調査では現地調達先の品質や技術力に課題が残るとの回答が突出して多く、特に一般機械や輸送機器では7割以上がこの問題を挙げている。また、同国では「現地調達先の品質や技術力が不十分」の回答が突出して高かった。原材料や部品メーカーの不在を挙げる回答も目立った。これにより、進出する日系企業にとって、インド市場での競争力を高めるには、技術向上や品質管理の強化が急務となる。
 インドでは現地雇用する人材を多く確保できるメリットがあるものの、短期間で人が入れ替わることを想定して、工程ごとに人が行う作業の単純化が求められるという。業種によっては生産管理の作り込みやNC機械により、人が介在する作業を単純化することはできるかも知れないが、ファスナーメーカーなど鍛造設備を必要としてオペレーター育成期間を要する業種では、まだ短期間で人を雇用して工場を立ち上げることは難しいだろう。すでに進出している日系ファスナーメーカーのように、他業種に習わず長い年月をかけた技術育成が求められるのではないか。
 また調査では直近5年間で他国・地域から生産機能を移管した割合が15・6%に上り、移管先としてベトナムが最多であることが分かった。特に日本のほか、中国、台湾からタイ、インドネシアなどASEANへの生産移管が顕著に見られ、理由としては、コスト競争力向上やチャイナリスクの回避が挙げられている。
 直近5年間で、多くの企業が新たな調達先の開拓や調達先の分散化を進めた一方、品質確保の難しさから現地調達の拡大には慎重な姿勢も見られる。今後1~2年では、インドやベトナムなどにおける現地調達拡大が期待されるものの、技術移転や現地企業との連携を強化しなければ調達網の安定化はできない。
 日系サプライヤーは、アジア市場での成長を見据えた戦略転換が求められている。持続可能なサプライチェーン構築に向けては、コストや市場戦略にとどまらず、地域社会との調和や長期的な関係構築を視野に入れた取り組みも必要だ。

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