半導体企業の「主役交代」、日本企業の立ち位置はどこに

2024年12月2日

 直近の決算発表で、過去最高の増収増益を果たした生成AI向け半導体最大手のエヌビディア。先ごろ、インテルと入れ替わってダウ平均株価の30銘柄に採用された。時代に合わせて入れ替えが行われるダウ30銘柄とはいえ、一つの時代が終わり、新たな時代の始まりを予感させる動きだ。
 生成AIソフトの代名詞ともいうべき「ChatGPT」は、自然言語処理でユーザーからの質問やコメントに相応しい回答を生成する。大量のテキストデータから学習し、文脈に基づいて応答するので、事務職や営業職だけでなく、製造現場など、様々な分野で利用されている。
 そのChatGPTを支えているのがエヌビディアだ。生成AIブームを追い風に急成長した同社は、同分野向け半導体で世界シェアの約8割を握るとされる。早くからAI市場を見据え、開発環境ソフトの充実に早くから取り組んだことが功を奏した形だ。一方で30銘柄加入が決まった際、トップが「新しい産業革命の始まりだ」と発言するなど、野心的な面も持つ。現在、AI市場では向かうところ敵なしの一強状態である。
 一方のインテルは、かつては世界最大の半導体メーカーとして知られ、1990年代のパソコン全盛期に業績を伸ばした。当時はマイクロソフトのOS「ウィンドウズ」と、これを動かすインテルのCPUを搭載したパソコンが世界中を席巻し、ウィンドウズとインテルの2つの単語を合わせた「ウィンテル」なる言葉まであったほどだ。半導体業界の世界的な技術革新は、驚異的なスピードで進んでいる。栄枯盛衰は世の常とはいえ、何やら寂しいインテルの退場劇である。
 いや考えてみれば、それより前、インテルが台頭するまでの80年代の半導体市場は日本企業の独壇場だったではないか。テレビや音響機器などの家電は当時、自動車と並ぶ日本の基幹産業。世界市場でも競争力は高く、家電メーカーと直結していた日本の半導体も、世界の中で高いシェアを誇っていた。
 日本の「この世の春」を終わらせたのがアメリカだ。政治や軍事面では同盟関係の両国も、経済面ではライバル関係。外国製半導体の日本市場への参入が不十分云々と理由をつけ、報復措置を実施した。国を挙げての反転攻勢に日本企業はなすすべもなく、アメリカ企業にシェアを奪われた。そして現在、日本企業の半導体シェアは言わずもがなである。
 AIブームに乗り遅れて失速したインテルをみると、かつての日本の半導体メーカーの姿が重なる。それでも日本には、高い世界シェアを誇る半導体製造装置と部素材がある。これらの強さを武器に、国産半導体復活の狼煙をあげたいものだ。

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