眠る資産「図面」を活用する動き

2024年10月14日

 図面データの効率的な管理と活用は、製造業における競争力向上の鍵となる重要な課題になりそうだ。多くの企業がこれまで図面を紙で保管してきたため、過去図面の探索が困難であり、社内スペースの問題や管理コストの増大を招いていた。デジタル化を進めた企業でも、図面データが十分に活用されず、単なる保管にとどまるケースが多かった。しかし、近年の文字認識技術やAI技術の進展により、類似図面の検索が可能となり、図面を資産として活用する動きが加速している。
 製造業の数少ないユニコーン企業として注目されているベンチャーでは、独自の画像解析アルゴリズムを用いて高精度の類似図面検索を実現するクラウドサービスを提供している。この技術により、設計・調達・生産部門におけるコスト削減が可能となり、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する。具体的には、形状の特徴をもとに類似図面を検索し、差分を表示することで設計作業を効率化する。また、図面内のテキスト情報をデータ化してエクセル形式で出力する機能を備え、社内での情報共有がスムーズになる。さらに、発注実績データを自動的に図面と紐づけることで、発注価格やサプライヤー情報を一元管理し、調達業務の効率化を実現している。
 機械工具商社大手が運営するサービスに、同じく図面管理に特化したクラウドシステムがある。図面をキーに関連書類を統合的に管理する機能を持ち、見積もりや仕様書、CADデータまで一括で扱えるのが特徴である。図面に関する手書きメモをデジタルで残し、個人のノウハウを会社全体で共有することも可能である。また不良履歴を参照することで品質管理を向上させている。
 これらのサービスは、図面データをただ保管するだけでなく、積極的に活用することで業務効率の向上とコスト削減を実現する。製造業において図面は企業の重要な資産であり、今後も図面データを軸としたDXの進展により、競争力を持続的に高めることが求められる。これらサービスが示すように、技術の進化を取り入れた図面管理の効率化と活用が、製造業界全体の課題解決に寄与するだろう。
 これらのサービスにより情報の可視化が進み、企業内のコミュニケーションが活性化し、部門間の連携も強化されるだろう。図面管理が一元化されることで、担当者に依存しない知識の共有が進み、次世代技術者への知識伝承も促進される。図面データの積極的な活用は、業務の効率化にとどまらず、企業文化の変革をもたらす可能性を秘めている。製造業の未来に向けて、図面を最大限に活用し、持続的な成長を実現する取り組みが一層重要となる。

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