経産省が今年5月に公表した「2024年版ものづくり白書」によると、製造業者における就業者数を世代別にみると34歳以下の若年就業者についてはここ10年で毎年概ね260万人程度となっており、最新の結果である2023年から10年間遡って2014年から数値を見ていくと若干の減少傾向が見られるがほぼ横ばいの状況が続いている。他方で製造業における高齢就業者(65歳以上)の推移を見るとここ10年では14年から19年にかけて増加傾向が見られるもその後は緩やかに減少していることが分かる。また女性の就業者及び女性が占める比率についてはこの10年で概ね横ばいとなっている一方で外国人労働者が製造業・非製造業のどちらにおいても右肩上がりで増加していることが分かっている。製造業における外国人労働者が占める比率は2014年時点では2・8%となっていたが、新型コロナウイルス感染症の影響が途中ありながらも2023年で5・4%とおよそ倍に至るまで増加している。
人材不足の原因として若年世代が厳しい職場環境を嫌って製造業への就職を避けている、などとしばしば言われるがデータからは若年世代は横ばいながらも毎年一定数就職していることが分かる。また同じく女性の活躍が期待され、製造業の現場で活躍する女性が取り上げられる機会が散見されるようになったが製造業全体では女性の就業者数は特別増加も減少もしていないことが分かる。そしてその一方で同白書においても「ものづくりの現場で多くの外国人労働者が活躍していることがうかがえる」と指摘しているように外国人労働者数は確実に増えており、将来いわゆる技能実習制度に代わる制度の運用が見込まれることから今後は外国人労働者の数は更に増えていくことが予想される。
業界でも各社に話を聞くと人材確保のために休日日数や職場環境の改善を進めているとの話が聞かれるが、職場環境については昨今の気候変動を無視することは難しく特に夏場であれば近年では35度を超える猛暑日が珍しくなくなりつつある。本来であれば運動するのが危険な環境であるため現場での熱中症対策は必須となっており、空調服やスポットクーラーを見かける機会が増えたが職場環境を見直すきっかけになるだろう。
国内製造業における人材不足はかねてより俎上に上げられてきた課題の一つである。ロボットやAIといった新たな技術が受け入れられつつあるが現状は人の代替をするには至っていない。その時々の社会情勢から地球環境に至るまで様々な要素を考慮しながら事業の存続のため年齢・性別・国籍問わず新たな人を受け入れるために柔軟に対応していく必要がある。