工・学で取組む次世代の育成に期待

2024年9月9日

 我が国のねじ業界において、人材教育は急務である。少子高齢化が進む中、次世代の担い手をどう育てるかが業界全体の課題となっている。特に、現場での技能者育成と学術的なエキスパートの育成は、産業の競争力を維持・向上させるために不可欠である。
 (一社)日本ねじ工業協会は、ねじ製造技能検定試験を通じて、現場オペレーターの技能標準化を進めている。この試験は、ねじ製造に従事する作業者の技術力を評価・向上させることを目的としており、ボルトフォーマー工、ナットフォーマー工、ねじ転造工、タッピング工の4職種に分類される。試験は1級と2級に分かれ、経験年数に応じた技能者の実力を測定する。特に、1級試験では高度な技術力が求められ、段取り作業や検査作業において実機を用いた実技試験が行われる。また、筆記試験では専門知識やトラブルシューティング能力も問われる。この試験を通じて、業界全体の技術力向上が期待される(今年度試験は1級のみ、ナットフォーマー工以外を実施予定)。
 一方、(一社)日本ねじ研究協会は、学術的エキスパートの育成に力を入れている。同協会の人材育成プロジェクト「ねじ大学校」では現在、技術者コースを通じて、締結技術に関する深い知識を持つ専門家を育成している。学生は2年間で必要な講習を受け、研究活動に参加し、最終的には「MFT(Master of Fastening Technology)」の称号を得る。卒業生は、今後のねじ業界をリードする存在として期待されており、学術的な知見を現場にフィードバックする役割も担う。今月は第1期生が卒業して修了者が初めて輩出された。
 両団体の取組みは、一見異なる方向性を持つように見えるが、共通する目的は「次世代の育成」である。現場の技能者が高い技術力を持ち、学術的なエキスパートが新しい技術や知識を業界に導入することで、日本のねじ産業は国際競争力を維持・向上させることが可能となる。この取組みが十分に機能するためには、制度の普及と修了者の増加が必要である。今後は、ねじ製造技能検定試験の受験者数や、ねじ大学校の学生の増加が期待される。若手人材が業界に定着し、将来的にリーダーとして活躍するためには、業界全体での支援が不可欠だ。また、自社の社員を育成する目的でこれら教育制度を有効に活用することもできるだろう。
 今後、日本のねじ産業が持続的に発展していくためには、人材育成の重要性を再認識し、現場の技能者と学術的エキスパートの両方をバランスよく育成する体制の整備が急務である。業界全体が一丸となって次世代の人材を育成し、未来の競争力を確保することが求められている。

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