本紙アンケート調査では定点観測として業界企業の売上や販売数量及び利益、今後の見通しについて調査を行っているが今年の夏季特集号に合わせた調査では国内景気の停滞感が浮き彫りになる形となった。
このうち売上について、前回調査(24年新年特集号)では昨年下半期(23年6月~12月)の売上についておよそ半数の企業が「大幅増」もしくは「小幅増」と答えていたのに対し、今回は2割強にまで落ち込んでおり今年上半期の厳しさが見て取れる。利益面でも同じく前回調査では4割近い企業が増加と答え、2割強の企業が「横ばい」と答えたのに対し今回調査では増加と答えた企業は2割程度に留まったのに加えて「横ばい」と答えた企業が3割強まで増加するなど売上に加えて利益面でも苦戦している様子が見て取れる。
注目すべきは半年前の前回調査において24年1月~6月の見通しについて尋ねたところ「横ばい」が全体のおよそ50%を占め「良くなる」「悪くなる」がほぼ同率となっていたが実際は売上、利益の両面で苦戦している企業が増えたところを見ると24年上半期は想定よりも景気が落ち込んだと見て良いだろう。実際のところ前回調査の回答期間が過ぎた後で自動車メーカーの品質不正問題が発覚したほか、7月下旬から日銀の追加利上げなどもあって一気に円高に振れたが年初の141円台から一時は1㌦=160円を突破する記録的な円安も生産コストの増加に拍車をかけた。今回の夏季特集号では見通しについて前回と同じく「横ばい」が全体の半数を占めている一方で、今回は「悪くなる」と答えた企業が「良くなる」「分からない」を上回る結果となった。
また今回調査では昨今関心が高い企業による省力化の取組についても併せて調査を行ったが、取組状況については回答者の8割近くが喫緊の課題として取り組んでいる、もしくは少しずつ取組んでいると回答する結果となった。取り組みの内容としては管理面での取り組みとなる「業務の見直しや削減」が最多を占めたが「ロボットや機械導入による自動化」が次点となっている点は鋲螺業界においても自動化に向けた投資が前向きに行われている様子が見て取れる。一方で「IoTによる工程管理」は一定の得票があったもの、「AIによる業務分析」は極めて少数となりデジタル技術、特にAIの活用については今後更なる拡大の余地を残しているものと思われる。また省人化に取組む上での課題については「設備コスト」が最多を占めたが景況感が決して良くない現状で自動化設備に投資できる余力がある企業は多くは無いだろう。逆に言えば景況感が上向いてきたなら自動化の取り組みにも変化が起こる可能性が残されており、今後も動向を注視したい。