中小企業庁と公正取引委員会は、下請け法の改正に向けて「企業取引研究会」を開催する。この研究会の主な目的は、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を新たな商慣習として定着させることであり、それによって中小企業の取引環境を整備し、経済の好循環を実現することである。7月22日に初回が開催されて、今後は月に一度の頻度で非公開で行われるが、議事録は速やかに公表される予定だ。
この研究会の委員には、学識者や団体代表が多く名を連ねているが、民間企業の代表者が少ない点が目立つ。例えば、委員には一橋大学、東京大学、立教大学などの教授が多く含まれ、企業代表としては中小製造業2社の代表が参加するに留まっている。これにより、多様な業界の実態を反映するには不十分であると感じる。
中小企業の取引環境の整備は、我が国経済の好循環を実現するために不可欠である。特に、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁が求められている。現状では、サプライチェーンの取引段階が深まるにつれて価格転嫁が滞ることが多く、適切な価格転嫁の定着にはまだ多くの課題が残されている。この点についても、現場の実情を反映した議論が求められる。
現状の研究会の構成を見ると、学識者や団体代表の意見が中心となりがちで、現場での実際の取引に関する知見が不足する恐れがある。下請け業界は多岐にわたり、製造業だけでも様々な業種が存在する。それぞれの業界には固有の課題があり、それに対応するためには、各業界からの代表者を研究会に加えることが重要である。そうすることで、より実態に即した議論が可能となり、下請け法の改正に向けた具体的な施策が生まれるだろう。
さらに、現場の声を反映することは、政策の実効性を高めるためにも不可欠である。例えば、価格交渉の際にどのような問題が生じやすいのか、またどのような方法で解決できるのかといった具体的な事例が提供されることで、より実効性の高い対策が検討されるだろう。
また、企業取引研究会の議事録の公表は、透明性を確保するうえで重要であるが、同時に、民間企業の参加を促進するための具体的な方策も求められる。今後の研究会の進展に注目し、さらなる多様な視点の取り入れを期待したい。中小企業の声を反映した政策が実現されることが、健全な経済成長への第一歩となる。企業取引研究会が、多くの業界からの声を取り入れ、実効性のある政策を策定することを期待する。これにより、我が国の中小企業が健全な取引環境のもとで成長し、ひいては経済全体の発展に寄与することを願ってやまない。