選択と集中でなく温存と集中

2024年7月22日

 時評子は展示会開催前に公式HP内の出展社リストをチェックするのが定例だが、規模が大きいと出展社一覧を眺めていては数が多く検索をかけて絞っている。キーワードに「ねじ」「ばね」「ボルト」「スプリング」「鋲螺」「発条」「発條」等を入れてヒットした企業を確認していくが、最近では時評子がねじ・ばね関連企業と考えている企業がヒットしない例もあった。
 かつてはねじ・ばね関連でも、その企業としては現時点ではそう考えてはいないのか、HP内の紹介文等に記載せず、ヒットしないのだろう、少なくとも時代の流れもあって「本業」とは思っていないのかもしれない。
 よくあるのが、①ねじメーカーが幅広い意味の金属加工品メーカーに、②ばねメーカーがばね性のないプレス・フォーミング加工品メーカーに、③メーカーが商社に、④逆に商社がメーカーに、⑤メーカーがアイデアを研究・開発してみて完成したが、大量生産となると自社の設備・製造能力では難しいので、ライセンスを貸与や売却するべく協力先を探しての知財の営業・管理を、⑥建築・土木業界向けに販売していたのが現場で施工もするように、⑦線材商社が設備機械商社も、⑧DIY・ホームセンター向けに展開していった過程でペット用品等も幅広く販売、⑨社内用に開発・使用していたシステムを販売、⑩かつては工業地帯や工業関連の商社が多かった地域だが、時代の流れと共に市街地(商業地区・住宅地)が拡大してきた為、それを機に事業所とマンション等を一体とした建物で大家を、⑪さらには海外展開していった過程で食品の配達販売までするようになった―例もある。
 需要がある・ありそうなものは手広くやってみる。「選択と集中」と云われるが、実際は「多角経営」に向かって、今までの事業については量を減らしても無くす事はなく、新しい事業に経営資源を「集中」はするけれど「選択=捨て」はせずに「温存と集中」というのが実態なはずだ。
 顕著な例はユーザー層が自動車産業の企業だろう。従来のガソリン車から電動車が普及する可能性もあるが、それぞれのメリット・デメリットが分かりつつありどうなるか読みづらい現状において、今後の設備投資や製造体制構築は〝どちらに転んでも大丈夫なように〟で進めている企業もある。
 ねじ・ばね需要が無くなる・急減する事はまずない、そして安定的な売上ベースと考えれば、次の一手に踏み出せる安心感があるのは重要であろう。従来のは「温存」、そして関連・全く違う分野に「集中」した事業展開で時代の変化に強そうなのが、ねじ・ばね関連企業のはずだ。

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