新規採用だけじゃない、雇用維持も

2024年6月24日

 総会の多いシーズンも一段落、ねじ・ばねに限らずユーザーや関連する業界団体の取材を巡っていると挨拶において昨今の採用・雇用の難しさについての話が多くみられた。
 或る企業では採用したが初日に出社せず、今話題の退職代行サービスから連絡が来たとの事で「テレビ等で報じられてはいるが、本当にこういう業者を使用する例があるのか」と話があった。
 また別の企業では「新人の給与を引き上げると元々いた社員の不満になる可能性があり、特定の世代・年代や入社時期だけの給与を上げる事は難しい。全体のバランスを欠くと不公平感が蔓延し、社員達の離職にも繋がりかねない」旨でも話があり、採用は一時的なものだが、雇用は継続的であり、社内の構成・人口ピラミッドは常に注視して、社員の心を繋ぎとめる必要があると考えさせられる。
 順当に経済が成長していれば、物価も給与も段階的に上昇していたはずだが〝失われた30年〟で停滞し続け、少子高齢化・人手不足で急に長年の宿題を解決する必要性に迫られた感がある。
 また採用活動では工業高校・高専・専門学校といった学校からの採用に注力が見られ、学校(教員)との関係構築を推進する例もある。しかし金属加工でなくシステムやプログラムといったIT分野専攻だったり、卒業後は就職せずに大学進学も増えており、採用対象となりうる生徒は少なくなりつつあるようだ。
 そして外国人を雇用している企業の話を聞くと「真面目でよく働いてくれる」と好評だが、心配な点として昨今の円安で雇用している外国人にとって日本円での給与は変わらなくても、自国の通貨で換算すると給与の額が減少してしまっている事で、今後は人材確保が難しくなる可能性を憂いていた。彼らの真面目さは日本円の高さ・価値=給与・待遇の裏返しとも考えられる。
 一方で質と量の言葉通り「量」でなく「質」を向上させようとする取り組みもみられる。
 業界団体が研修会を開くと、そのイメージから参加者は若者・新人ばかりと思われがちだが、最近は中高年・中堅も多い。そもそも少子高齢化で若者自体が少ないとも考えられるが、時代もあるのか中高年・中堅は入社当初に決まったカリキュラムらしい研修を受けずいきなり現場からだった例、また当時学んでいたとしても長年を経て忘れている事もあり〝学び直し〟の機会として、そしていざ新人が入社した際に教える必要性に迫られるから参加している例もあるとの事だ。
 人手不足と云われるが、一つの方法だけで対策・解決は難しい。あらゆる方法を模索して、その為の手間、そして費用を惜しんではならないはずだ。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。