人手不足が大きな社会問題となるなか、4月1日から運輸・建設業に時間外労働の上限規制(960時間)が課せられた。いよいよ、「2024年問題」が本格化することになる。
2024年問題は、ややもすればトラック運転手の不足で輸送力低下が懸念される物流問題ばかりに関心が向きがちだ。しかし、「荷主」となる製造業も他人ごとではない。物流は国民生活や経済を支える社会インフラで、滞れば日常生活に大きな影響が出かねない。そのため、荷主から消費者まで、社会全体で解決に取り組む必要がある。
ある大手機械商社が行った「2024年問題に関する意識調査」によると、製造業のうち2024年問題を把握している企業は8割を超えている。ところが「対策を考えている」企業となると、3割に満たない。その理由として挙げるのが、「どこから手を付けてよいかわからない」「コスト面で苦しい」「対策部署がない」といったもの。加えて、「2024年問題に対応する必要性を感じない」といった回答まである。
現実的に考えてコスト面を重視すると、輸送費用が安い業者への転換や運賃削減に走りがちだ。ただそうなると、ドライバーの待遇改善の機会を失い、運送業者の経営難を加速させることにもなる。物流コストを持続可能な方法で削減しなければ、運送業者も荷主側も共倒れになるだろう。
先の調査では、2024年問題で影響を受けそうなこととして、「輸送費の高騰」「発送~納品までのリードタイムの長期化」を挙げている。その一方で運送業者が荷主に求める対策については「職場環境の改善」が最多。これをみても、両者のギャップは明確だ。
実際のところ、荷物積み下ろしの待ち時間は数時間でトラックの平均積載率は4割しかないという事例もある。業務改善を怠ってきた結果がこれだ。反面、運送業者からは、複数企業による共同輸送など物流の効率化を図る動きも出ている。業者間で役割を分担し、重い荷物と軽い荷物を混載してトラックの積載率を高める提案もある。
運転手のみならず、人手不足はすべての業界に共通する課題。当然のことながら製造業も人材難は深刻だ。賃金だけでなく仕事そのものの魅力がないと人材は流出し、淘汰されていくだろう。限られた人材を生かしながら省人化や省力化を進め、自動運転やドローンでの測量・配達、ロボットによる施工・積み荷などで、問題解決の糸口をつかみたい。
4月からしばらくの間は、一定の混乱が生じるだろう。それでも2024年問題を悲観的に捉えず、全業界共通認識のもと、長時間労働の見直しなど社会全体が働きやすい環境に変わるきっかけにしたいものだ。