慢性化する人材問題、コトづくりの視点も必要

2023年12月11日

 今年もいよいよ残すところ3週間となった。足元の景況感は工作機械など設備関係については低調な状態が続いている一方で、公共工事や都市開発などは好調に推移しているとの話が聞かれる。現場の人手不足もあって中小物件が見送りとなるケースがある一方で大型物件については堅調に推移している模様だ。一つの事例として例えば福岡市中央区では大規模な再開発計画として知られる「天神ビッグバン構想」が2015年より始まっているが、関係筋によれば少なくともこの先数年は好調な状態が続くだろうとのことである。他にも大阪は梅田駅近くの再開発が活発に動いているほか、地方に目を向けると岡山駅前の開発が進行中であったり仙台駅でも再開発の動きがあったりと再開発に関するニュースが散見される。また関西では既に暗雲が垂れ込めているが「大阪・関西万博」という材料もある。現在は米中を筆頭に世界経済の停滞が続く中で国内における再開発の盛り上がりが相対的に好調に見えるという図式で、鋲螺業界を見てもドリルねじやアンカーボルトといった土木・建築関係の製品については堅調に推移しているようだ。なお秋口からは一部の自動車メーカーで復調の兆しが見られているが特に中国市場において日本メーカーが苦戦するなど依然として厳しい状況にある。「EVシフト」は鋲螺を含む部品メーカーに大きく関わる出来事であることには変わらず、今後の動向に注目したい。
 以前も小欄で触れたが人手不足の問題は土木建築分野だけでなく今後国内のあらゆる産業に関わってくる課題となるだろう。本紙では11月27日付号にて既報の通り政府は人手不足の改善に向けて省力化を支援する補助事業の推進を決めている。省人化・自動化の動きが一層進むのは間違いなく、また同事業では賃上げの達成を要件としているが賃上げをはじめ働き手にとって魅力的な職場環境の構築もまた企業の課題となることが予想される。生産性の問題は最後には人に行き着くが人の問題は仕事に求められるスキルや待遇といったある種目に見えやすい要素だけではなく職場の雰囲気、人間関係といったデリケートな部分も含まれる。人材業界による退職理由をまとめたアンケートを見ると「(職場の)人間関係」が上位に来るケースが多く、逆に言えば職場の空気づくり、ハラスメント対策といった取り組みが人材の問題に大きな効果をもたらす可能性があるということにもなる。その点において業界企業では組織のあり方を考える経営トップが増えてきたという印象を受けるが、人材に対する課題に取り組む際にはヒト・モノだけなくコト(事)にも目を向ける必要があるだろう。

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