人材不足の時代、現場の改善が急務

2023年11月20日

 かねてから言われてきていることではあるが、労働人口の減少に伴う働き手の不足は今後も国内産業の大きな課題であり続けることが予想されている。製造業ではより効率的な生産活動のため多能工化を進める流れが存在していたが本来であれば多能工化はマルチタスクを担う人材が十分足りているという前提がある。それでこそ状況に応じた最適な人員配置や、生産計画に応じた柔軟な対応が可能になるのだが省人化やコスト削減を目的念頭に起きながら能工化を進めると作業者に対する依存度が高まるリスクが生じ、また技能継承という点でも後任の人材が超えなければいけないハードルが上がってしまう。しかしそうはいっても現場によっては人手不足が常態化する中でベテランの退職に伴い現場に残っている人間がマルチタスクを担わざるを得ないという事情もあるだろう。
 昨今ではロボットや自動搬送車(AGV)を活用する姿が業界企業でも見られてきたが設備導入以外にも台車の軽量化や小箱化による重筋作業の解消といった、作業用品を見直したり作業内容を可能な限りシンプルにすることで仕事を担う人材のハードルを下げるなど肉体的・精神的な負担を減らすなど“いかに人を採用するか”はもとより“いかにして人を減らさないか”についても検討する必要がある。内閣府の調査によれば近年の若年世代は仕事よりもプライベートを優先させる志向が強く、別の民間企業の調査によれば残業を嫌う傾向にあるという。冒頭にも述べたが働き手の確保という点で今後も業務改善や効率化は課題としてあり続けるだろう。
 そして人材不足とその解決が避けられない課題となっている以上、今後労働人口が更に減少していった際には業務効率化に関する取り組みが今よりも大きな付加価値を持つようになっていくことが予想される。業界でも特に商社ではユーザーの利便性向上のためECサイトや在庫管理システム、スマホアプリ等のシステム開発や新しいデジタル技術であるAIの活用といった先駆的な事例を積極的に開拓していこうとする企業が散見されているが鋲螺(ねじ)という製品の流通構造からもパートナー企業への支援が相互の発展に繋がる可能性は高く、中でもシステム面での共通化・統一化から受ける恩恵は大きい。「産業の塩」たる鋲螺は鋲螺そのものに価値があることは言を俟たないが鋲螺を適切に供給するサプライチェーンにも同様に価値がある。そしてその流通網を最適化するプラットフォームをこの人材不足の時代にどのような形で構築して顧客及びパートナー企業へ提案していくかは業界における一つの論点になるのではないだろうか。今後の動向に注目したい。

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