サプライチェーンがグローバルに広がっている現代の製造業において、市場占有率の高い材料・製品の生産停止は、完成品の生産にまで影響を及ぼす事態を発生させる。
ここ数年で世界の製造業は自然災害や新型コロナ感染症拡大、さらに企業の事故や不祥事、コンピューターウイルスによるシステム攻撃といったケースにより特定製品の供給停止やトラブルにともないサプライチェーン全体の混乱を数多く経験してきた。
直近ではファスナー業界でも、多くの製品で採用されていた米国製の緩み止め接着剤の今年9月の生産終了にともないサプライチェーンに混乱が生じた。今後は代替品による同市場の大きな構造変化が生まれると予測される。サプライヤーは代替品への転換にともなう生産体制の準備、買手側は従来品の在庫品の確保や代替品の選定、変化点管理に追われることとなる。
ばね業界では国内最大手自動車メーカー系列のばねメーカーの生産設備の事故にともない、主要製品のシャシばねの供給不足となり、自動車メーカーの完成車工場が、国内で延べ10日間にわたって8工場13ラインで稼働停止に陥った。これらケースは改めて、一部製品の供給不安がこれに関わるサプライチェーン全体の影響に及ぼすことを示した。
特定材料・製品の供給停止の影響を抑えるために事前の対策が必要となる。
まずは当然ながらこれら材料・製品に代わる代替品を探す必要がある。市場で入手可能な代替品を評価し選定しよう。また供給リスクを分散化するため、複数のサプライヤーと契約を結び、供給チェーンを多様化する。これにより、特定のサプライヤーに依存せずに、代替品の供給源を持つことができる。
代替品を選定する際には、品質と性能の評価が不可欠だ。既存の製品と同等またはそれ以上の性能を持つ代替品を選び、製品の品質を維持するために十分なテストと評価を行わなければならない。また契約時に供給停止トラブルに関する法的な取り決めを把握しておきたい。
在庫の適切な管理も重要だ。十分な在庫を確保しておくことで、供給中断があっても製造ラインの停止を最小限に抑えることができる。
サプライチェーンにおけるリスク管理は不可欠だ。異常事態に備え、リスク評価を行い、供給中断に対する対策を事前に策定しておきたい。また供給中断が発生した場合、緊急の緩和策を検討し、代替品を導入し、生産を継続する方法を事前に確立しておきたい。さらには代替品の選定だけでなく、新しい技術やイノベーションにも注意を払い、サプライチェーンの強化とリスク軽減に貢献できる方法を模索しよう。