迫る“2024年問題”、健全な物流に向け議論を

2023年10月23日

 今年も残り2カ月を残すところとなったが下期は自動車業界も一部挽回生産に向けて動き出すなど明るい材料もあったが総じてみれば景況感は上期に比べれば持ち直しの動きが見られるも横ばいもしくは低空飛行が続いており、残念ながら年末まではこの状態が続くという見方が多い。期待されていた大阪・関西万博の雲行きが怪しくなっている一方、熊本の台湾半導体メーカー関連の大規模工事や同じく国内半導体メーカーが札幌への進出を決めるなど半導体については前向きなニュースに事欠かないが、一方で札幌の進出に伴い人手が大幅に取られることから札幌の再開発について計画を修正する動きが見られるなど難しい問題も出始めている。少子高齢化に伴う働き手の不足はそれこそ20年以上前から言われてきた大きな問題であるが、そして最近の事例で言えば東京五輪の開催前にも同様の問題が散見されていたがこの問題に対して回答が出せないまま20年が過ぎた結果ついに国内における企業活動に支障をきたす事態に陥っている。
 そして人手不足と言えば、年の瀬が近づくにつれ物流業界におけるいわゆる「2024年問題」が注目を浴びている。既に広く報じられている通り来年4月よりトラックドライバーの時間外労働が年960時間に規制されることを受けて従来通りにモノが運べなくなる可能性が懸念されている。(公社)全日本トラック協会によればこの問題に対して何も対策を行わなかった場合来年24年時点で輸送能力が14・2%不足するとしており、特に長距離輸送について「今まで通りの輸送ができなくなる」と警告している。“何も対策を行わなかった場合”とあるように同協会は改善に向けた提言を行っており、荷主とトラック事業者が連携して取り組むべきこととして「待機時間の削減」や「労働環境の改善」等を挙げている。またトラック事業者から荷主への要望としては適正な運賃の収受及び運賃以外に発生する燃料サーチャージ等の料金に関する収受が挙げられているが、あえて簡潔にまとめるならば改善に向けた要請の骨子は荷主に対して必要な範囲での業務効率化に対する協力と適正な利益確保への理解、そして一般消費者へは再配達を減らす配慮を求めるといった過剰なサービスに対する自粛を求めているもので決して実現が難しい内容では無いように見える。こうした常識の範囲に収まる要望が「問題」として広く注目を集めてしまうという現状は物流業界に多くの負担を強いてきた日本社会の実態を映しているのではないか。この問題を皮切りに荷主、運送業者、消費者の三者にとって適正かつ健全な物流のあり方が議論されていくのが今後の日本社会にとっても良いことであるはずだ。

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