不透明感拭うため、適正な価格転嫁を

2023年6月19日

 2023年も気付けば折り返しを過ぎている。年初から期待されていたように3年にわたり続いたコロナ禍の影響は国内に関して言えばほぼ取り払われつつあり、社会活動はいよいよ本格的な再始動を迎えようとしている。今月下旬には東京で機械要素技術展が、また来月には同じく東京でおよそ4年ぶりに「MF―TOKYO」の現地展示会が開催される。塑性加工技術の専門展として知られる同展はねじの成形や検査に関する最新の設備・技術が多数集まる場として知られており、今回同展は「人と地球にやさしい技術、確かな未来のために」をテーマとして掲げていることから昨今でも関心が高い環境負荷低減やよりサステナブルな生産に貢献する展示が注目を集めるものと期待される。また秋には福岡でも初となる「機械要素技術展」が開催される予定であり、九州・四国地域の業界関係者との出会いの場として期待される。昨年より続いている先行き不透明感が長引いている中、対面による催しを通じてビジネスが加速していくことを期待したい。
 一方で産業界を取り巻く環境は概ね年初から変化が乏しい状況が続いている。政治/経済の両面に大きな影響を及ぼしているウクライナを巡る戦争についても目下のところ膠着状態が続いており終結の目途が立たない状況だ。鋲螺業界の動向を推し量る資料である貿易統計を見るとねじ類など15品目の輸出は今年1月から本号発行時点で最新の情報である今年4月まで数量は対前年比で約2割減、金額では月毎に異なるが平均すると概ね1割減と年初以来低い水準が続いている。同じく輸入についても最新の統計である今年3月まで3か月連続で対前年比数量減となっている一方、金額については数量で減少しているのにも関わらず前年比で増加している月(今年1月・3月)が見られ物価上昇の影響が見て取れる。
 物価上昇に関連した話題では今年6月からは電気料金の値上げが実施されており企業の生産活動にとってもマイナス材料が増える形となるが、健全な価格転嫁が行えていない中でのコスト上昇は大手と異なり体力の少ない中小企業にとっては逆風以外の何物でもなく、ねじ業界を取り巻く停滞感の原因にはこのコスト上昇と価格転嫁の問題が多分に含まれると想像される。ベースアップの話題が盛んに報じられた春先には中小企業による価格転嫁についても多少の関心が向けられていたが、政府は一時的な号令だけに留めるのではなく国内経済の発展のためにも不正な価格転嫁拒否を許さないという姿勢を示し続けるべきだ。

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