教育事業を通じて若手に未来を指し示そう

2023年6月12日

 (一社)日本ねじ研究協会は5月に行われた定時社員総会で、22年度より開始した教育プロジェクト「ねじ大学校」の進捗を明らかにした。
 ねじ大学校は、ねじを研究する若手を育てる大学の研究室が少なくなっていることから、ねじ研が指定する講習科目を経て業界のエキスパートを育成するプロジェクトだ。2022年度に初めて実施されており、現在、企業から輩出された第1期生の6名がカリキュラムを受講している。3月末時点ですでに10講座が開講された。
 育成コースには、締結に関するエキスパートを養成する①技術者コースと、ISO/TCなど国際標準化活動の場における日本をリードできるエキスパートを養成する②標準化コースの2種類があり、24年度からは初めて「標準化コース」の制度設計も行う予定としている。
 5月17日には第2期生の募集説明会が開催された。今期は技術者コースの15名程度の入学を見込んでいる。募集締め切りは6月30日までとなる。入学資格はねじ研会員となるが、1年を通じて業界エキスパートを育成する取組みに興味を示す企業は多い。ねじ研総会では企業や個人会員の入会増も報告された。
 一方、(一社)日本ねじ工業協会も事業化している「ねじ製造技能検定制度」について、実機による作業試験を含んだ新しい枠組みの構築を目指している。
 ものづくり業界全体は人材不足が大きな課題となっている。工場における現場オペレーター不足については、省力化や自動化といった対策がキーワードになっているが、モノをどのように造りシステムをいかに構築するかを考える役目は未だ人に替わるものはなく、数値に置き変えることができない技術もやはり人が保有している部分がまだ多い。こうした人材はおろか、業界全体の課題に取り組み指針を示していくエキスパートを若手から育成することは業界の発展には必要不可欠であり、ねじ研の「ねじ大学校」、ねじ協の「ねじ製造技能検定制度」の教育事業の推進に大きく期待したい。
 なお製造業界の教育事業の今を探るため時評子は(一社)日本歯車工業会が進めている「JGMAギヤカレッジ」を取材した。業界の若い世代に向けた教育事業であり、歯車技術の基礎から応用までを1年間カリキュラムを学ぶ制度となっている。開講式で同会が学びだけでなく同期生たちがコミュニケーションを図り、業界のつながりを活性化させることを狙いにしていることがわかった。
 講演での「歯車はなくならない、世界で戦える業界だ」という言葉も印象的で、教育を通じて若手に業界の明るい未来を指し示すことも重要であることが理解できた。

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