高騰する電気料金、今年も価格改定の1年か

2023年3月27日

 早くも4月を迎えようとしているが、今のところ昨年末頃からの停滞感を拭えないまま春を迎えてしまった感がある。以前より指摘されている米国そして中国という超大国の景気失速は世界経済にとって間違いなく歓迎されない事態であるが、他方で鋼材価格は高止まりで電気料金も昨今の水準から比べれば大きく上昇している。春先の料金改定については見送りとなる見通しだが仮に上昇幅が圧縮されるとしても値上げであることには変わりはなく企業活動に大きな影響を及ぼすことが予想される。
 半導体やマテハンなど一部堅調な分野があるも鋲螺業界の主たる需要家の一つである自動車業界は依然として力強さに欠けており関連企業もまた苦戦している印象を受ける。また自動車産業に関わる企業は「EVシフト」への対応をどのように判断するかという難問が残っており、ねじ・パーツ製品については以前から部品点数が大きく減少すると共に中太径の製品が無くなると言われてきた。前々号で取り上げた韓国の機械メーカーは「EV時代に対応した機械作りが必要だ」と断言していたが、今年もまた各社で模索が続く時間となるだろう。
 鋲螺商社の動向を見ていると昨年も価格改定が継続的に続いていたことから在庫が増加傾向にある一方で特に国内経済における需要は力強さに欠けており現況のまま今年も価格改定が続いた場合、もちろん全ての企業にとって頭の痛い問題となるのは確かだが、メーカーとユーザーを繋ぐ卸に大きな負担が発生するリスクが考えられる。昨今の物価高騰にあっては各社によって事情は異なれど鋼材価格を中心に価格転嫁を概ね認める空気があった。もはや鋼材価格だけでなく関連諸資材や電気料金の上昇に踏み込んだ例も見られるが、健全な事業活動のため適正な利益を確保することが製販問わず求められている以上今後もこうした動きは継続していくものと思われる。ただ、鋼材価格が大きく上昇を始めた21年はコロナ禍が発生した20年からの反動需要が一定数あった。それから丸2年が経過した現在でも値上げの波は続いているが仮に景気が減速したとしてその際市場に値上げを受け止めるだけの余力はあるだろうか。
 たとえ政府が旗を振ろうとも需要家が価格改定を肯定的に受け止めるとは思えず、これまで以上に価格改定の問題が重くのしかかることが考えられる。政府は賃上げの文脈から中小企業の価格転嫁について価格交渉に応じない企業の実名を公表するなど一定の対応を行っているが名前を公表するだけでは不十分で、また電気料金にしてもいわゆる「ゼロゼロ融資」にしても先送りの対応に終始することだけは止めてもらいたい。

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