ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎたが、毎年のように痛ましい出来事が起こってしまうのはもはや時代の宿命なのだろうか。トルコでの大地震発生からおよそ一カ月が経つ。現在のところトルコ・シリア両国合わせて死者5万人を数えるなど歴史的に見ても極めて甚大な被害をもたらした大災害となったが、これほどまでに被害が拡大した背景として耐震基準を満たさない違法建築の存在が指摘されている。地震大国として知られ、12年前に同じく歴史的な大震災を経験した日本としては大地震の存在は決して絵空事ではなく現実に存在する/存在した脅威である。このような脅威を前に人命を守る構造物に欠陥があってはならないし、欠陥が発生しうる決断を許す訳にもいかない。しかし残念ながらトルコの出来事においては建物の耐震性能を軽視するような行為が広く行われてきたのだとされており、それが今回のような未曽有の規模の被害に繋がってしまったという。
今年も6月1日「ねじの日」が近づいてきたが、このような出来事が起きたからこそ構造物を含めあらゆるモノとモノを繋ぎ止め、安全を担う部品であるねじの重要性を改めて啓発する機会にできないだろうか。優れた品質のねじを製造し、最適なねじを選び正しい締結方法を伝え、必要な時に求められるだけのねじを供給している国内の鋲螺業界は単なるモノを超えて最終製品の「安全・安心」を使用者に届けていると言えるだろう。例えばこのように表現し得る業界の役割を内外に向けて発信することで社会でのねじに対する理解が深まり、ひいては業界の地位向上が期待できないだろうか。昨年は連続テレビ小説の舞台の一つとして東大阪市が選ばれ、ねじ(工場)への関心が高まった時期があった。社会的に関心が高まっている中、業界からねじについて発信することは意義があるものと思われる。
他方で景況感について見ると、今年に入ってからはおよそ2年にわたり続いている価格転嫁への対応も含めて総じてみれば変化が乏しく先行き不透明な状態が続いている。在阪商社や関西圏のメーカーから話を聞いているとピーク時と比較して出荷数量がおよそ1割減少している一方、売上については材料価格の上昇などから1割ほど上昇しているというのが大まかな流れとなっているようだ。昨秋挽回が期待されていた自動車産業の生産活動については依然として力強さに欠いていることもあり、業界全体に波及する材料に乏しい状態が続いている。冒頭に触れたウクライナ侵攻についても膠着状況が続いており、当面の間は政治・経済両面に目配りを利かせながら判断しなければならない時間が続くだろう。今年の上半期もまた我慢の時間が続きそうである。