2月に入り3月決算上場企業の多くが第3四半期決算短信を発表した。その中でよくみられた記述は材料だけでなく電気・ガスといったエネルギー価格の高騰、一方で価格転嫁が進んだ事もあり企業によっては売上増や営業利益増も見られた。
上場企業に限らず、昨年はねじ・ばね企業の多くが鋼材は年に複数回のペースで川上(仕入先)から値上げ要請・連絡が来ており、他にも副資材・ガソリン等の値上げが今年も続く見通しだが、順当な経済成長としてのインフレではなく、ウクライナ―ロシア間の紛争をはじめ世界情勢の不安定化、そして円安も原因で良いインフレとは言い難い。
話題になるのは材料価格に偏りがちだがエネルギー価格も忘れてはならない。或るばね企業では2011年の東日本大震災をきっかけに材料・エネルギーの使用量・価格等の記録をEMS(ISO)の目的・目標に掲げており、電力の小売完全自由化(2016年4月)を受けて、法人向け高圧電力の契約を17年5月に新電力会社へ移行。だが従来使用していた大手電力会社が「長期割引」を設けた為21年6月から1年強の期間単位契約に戻した。しかしこの割引を活用しても昨年1月と今年1月を比較した場合で使用量はほぼ変わらないのに料金は約2倍に、そしてこの「長期割引」について大手電力会社から「今年5月で終了」と連絡があり、今後の電気料金に苦慮している。このばね企業は、背景として「長期割引」は新電力会社との価格競争の一環であり、多くの新電力会社が電源としていた再生可能エネルギーが、自然災害による太陽光パネルの脆弱性をはじめ安定的かつ大容量の電源として現状は難しい事が判明し、新電力会社の弱体化に伴い電力市場が大手電力会社の寡占状態に戻りつつある為―と推測していた。
そんな中で関心が高まり注力が見られるのは省エネ化。材料を減らして使う事は難しいが、加工、特に熱処理における省エネ化は企業努力の余地があるという事だろう。前述とは別のばね企業は最近ガス炉を更新したが、長年使用して熱効率が低下してきた従来機に対し、同規模・処理量ながらも熱効率を向上させた新型機でエネルギーコストの抑制を期待していた。
さらに別のばね企業の社長と話していた際「ユーザーは材料価格の高騰に対してその分だけの値段も認めない例もあり、それならば材料持ち込みで加工のみの発注としてもらえれば」とも述べていた。
加工された製品の価格は当然だが材料だけで構成されていない。加工・販売の他にも従業員の雇用、設備・事業所の更新・維持―等様々な費用がかかり、値上げは便乗ではなく真っ当な価格転嫁であると主張してユーザーに認めてもらうべきだ。