今年に入ってからコロナ禍の出口が明確に見えてきた一方、残念ながら景況感については先行き不透明な状況が続いている。1月末に国際通貨基金は今年の世界成長予測をおよそ1年ぶりに上方修正したが、内容としては昨年10月の時点から0・2ポイントの上方修正で米国の消費回復や中国経済の再開を理由として挙げているとのことだった。しかし目下のところその米中は政治的緊張が高まっており場合によっては23年のマイナス要因になりかねない様相を呈している。
一方現時点で予想できるプラス要因としては新型コロナウイルスが5類へと分類されることで共に社会的な制約が大幅に取り払われ、旅行やサービス業関係など非製造業については一定の回復が望めるだろう。業界ではコロナ禍以降の一時期交通機関の利用が大幅に減ったことによりメンテナンス向けでの需要が減ったとの話も聞かれたが、人の往来が増え既に底からは回復している社会活動が更に加速していく中で産業界への波及も期待したいところである。
ただ、現状コロナ禍に続いて発生したウクライナ戦争については終結の兆しが全く見えず依然として国際経済を覆う暗雲となっている。原油価格を見ると2月上旬の時点では紛争勃発以前の水準まで落ち着いているが、紛争の激化や5月に控えているG7サミットでの対応によってはロシアの態度を一層硬化させ、再び1バレル=100㌦の大台に乗ってしまう可能性も否めない。企業の生産活動に大きな影響が出てくるのは言うまでもなく価格転嫁への対応に再び追われる事態も予想される。他の業界と同じく鋲螺業界でも一昨年、昨年と価格転嫁に労力を取られる時間が続いたがやはりウェブでの対応が行える企業とそうでない企業で必要とされるマンパワーが大きく異なるという印象を受けた。小欄では何度か言及している事柄ではあるが、今度は生産性向上という文脈から省人化・自動化の推進及びデジタル技術の活用はコロナ禍が終息して対面での交流が自由に行えるようになった後でも引き続き企業の課題として残り続けるだろう。
ねじは産業の塩とされ、現在のところねじに替わる要素部品は出現しておらず、すなわち産業社会に求められる価値ある製品であり続けている。しかしねじを扱う企業は最近であればカーボンニュートラルやDXといった時代の要請に応えて変化し続けていかなければならない。ねじ業界の各団体も活動を本格的に再開させていくものと予想されるが、中部圏のある団体が関心の高いテーマを複数取り上げて連続講座を行っているように次世代技術をテーマとした催しや異分野の関係者との交流も今後ますます増えてくるものと期待したい。