秋は展示会の多いシーズンであり、時評子も首都圏・地方と取材に回った。2019年下半期に中国湖北省武漢市で確認された新型コロナウイルスが世界中に拡散し、2020年上半期には日本国内で感染が確認されて早くも約3年が経過したが、その間様々な展示会が中止もしくは規模縮小に追い込まれた。
そしてコロナ禍前から移動をせず通信で情報収集・交流を行うオンライン化が進むとは云われていたが、必要に迫られてこれを機にオンライン開催、そしてリアル(オフライン)・オンライン併催のハイブリット開催が増えたのは意義深い。まだまだゼロリスクとはならず国内感染拡大の第8波も危惧されているが、社会はリスクと向き合い様子見をしながら動き出している。
そこで改めて思わされるのは、オンライン展でアピール出来る事には限界が、そしてリアル展でアピール出来る事にも限界があり、それぞれ一長一短という点だ。
ネットの普及で情報収集は簡単になった。時評子も取材前に展示会公式サイトで下調べとして「検索」するが、考えてみるとこれは自分が入力したキーワードに関連する事しか情報が提供されない。広く情報を手に入れる為のツールが結果的に視野を狭めてしまっている可能性もあり、リアル展に行ってみると直接関連はなくとも興味深い対象があったりする。
これは出展者の視点で見ればユーザー自身も意識していない〝潜在需要〟と言っていいだろう。会場内を巡っていれば否が応でも入ってくる情報をきっかけに需要の発掘が出来るかもしれない。そして意外とあるのが人だかりに関心を持った来場者がさらに人だかりを生む現象。またサンプルが欲しくても、リアル展ならその場で一声かければ済むが、オンライン上だと申込フォーム等で名前・連絡先・住所…と入力する作業が手間でありハードルとなる。これは強みだろう。
しかしリアル展が完璧かというとそうでもない。日本最大規模の東京ビッグサイト(江東区)を例にとると東7・8ホール、南ホールと年々拡張してきたが、全ホール使用するような大規模な展示会の場合には来場者にとって時間的に、体力的に、さらに言えば予算的に1日でしっかり見て回る事は困難であり、同時に出展者にとっても多くのモノ・カネ・ヒトを投じる必要があり、費用対効果は大きな課題となる。そしてオンライン展は距離という制約から解放される点は大きい。
おそらくリアル展が無くなる事はない。そして展示会の全てがオンライン展になり替わる事もない。しかしアフターコロナは選択肢が増えた上で、来場者も出展者も両者の使い分けが課題となって来る。