物価高と賃金の乖離、下請け対策を主題に

2022年11月7日

 物価高が止まらない。日本銀行は10月28日に2022年度の物価上昇率の見通しを2・9%に引き上げた。これは前回公表(7月)より0・6ポイント高い。
 日銀の発表によると消費者物価の前年比は本年末にかけてエネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、こうした押し上げ寄与の減衰にともない来年度半ばにかけてプラス幅が縮小していくとした。その後は需給ギャップが改善して中長期の物価上昇率や賃金上昇率が高まり再び緩やかに拡大していくとした。これにより2022年度に高めに伸びたあと23年度、24年度に1%台に鈍化するとした。
 企業物価指数(2020年基準)が今年に入り10・8ポイントも上昇しているのがボルト・ナットだ。21年の1月が99・9だったのに対して今年は107・5から始まった。その後上昇は止まらず5月に111・3、7月に115・6、9月に118・3まで上昇した。数年前までは他品目に比べて物価の変動が鈍かったが、大きく上昇している。本紙でピックアップして公表している輸入物価指数を含めた鉱石類や材料品目のほとんどで前年比プラスとなっている。今年6月に302・9まで上がったニッケル地金の輸入物価指数が前月比下降を続けており、これがステンレス鋼線の値下げ要因となる可能性を聞くが、直近9月で229・1と依然として高水準であることに変わりはない。
 岸田首相は電気・エネルギーの物価上昇に対しては、家庭への経済対策として光熱費の支援を実施することを表明している。大手メディア報道で大きく取り上げられているが、当然この政策は急激な物価高騰の根本をつくものではないため本政策に効果が出るまで国民に耐えしのいでもらう補助支援策と捉えるべきだろう。
 総合経済対策として掲げている政策の中には物価高騰への対応・賃上げについて、公正取引委員会の体制強化や、独禁法、下請け代金法の厳正な執行も含まれている。物価高に対して賃金が追い付いていない問題について、政府は下請け企業が親事業者から適正な対価を得られていないと認識しているのであれば希望の光ではある。ただし注文をつけるとするならば、この問題は、物価高騰と賃金の乖離問題を解決するための一部の小さな政策ではなく、主たる政策と位置づけて欲しい。
 仕入れ価格の高騰→値上げ分を自社商品価格に転嫁する→値上げを受け入れて購入する。この単純なサイクルができていないために日本の今がある。このサイクルの障害となる要因を抜本的に是正できなければ、前述の問題はおろか、少子高齢化や国力そのものの衰退を加速させるおそれがある。

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