新型コロナウイルス感染症が日本国内で拡大しはじめて早くも2年半が経過する。感染拡大しはじめた2020年上半期を思い出すと、マスクや消毒液の不足があり、明らかに専業で販売していないと思われる店が感染拡大前と比較してはるかに高い値段で販売していたが、今では市街地の商業地区なら簡単かつ適正な価格で購入できるように落ち着いた。
突発的な需要の高まりや入手困難な観劇・演奏等興行のチケットをはじめ、今では様々な物品・サービスに対して横行する転売行為。ネットの普及で販売・購入希望の意思が不特定多数に伝えやすくなり、個人でも気軽に商取引を行うハードルが下がって便利になって頻発するようになったといえる。
もちろん商取引は原則として自由であり、売り手が値段を決定するのも、その提示された値段が高額であろうと買い手が承知した上なら購入するのも、最終的には双方が合意して取引成立する事が重要だ。 ただし法的には問題ないとしてもモラルとして問題なはずであり、また見込まれた需要分で生産された物品を、本来消費するはずだった消費者の手に届く前に購入して利ざやを得る行為、特にコロナ禍のような生命や安全に関わる物品の場合は何らかの対応策が必要なはずだ。
直接的に物品を製造しないが、それを消費者の手元にまで届ける事を専業としている商社としての意義。昨今の物価上昇でねじメーカーが棒線といった原材料や加工に必要な資材・エネルギーといった価格上昇分の値上げをユーザーに提示してもなかなか承諾されにくい。
一方で商社も倉庫をはじめ事業所を構え、その維持管理にかかる電気・ガス・水道等のインフラ、また倉庫管理・受発注担当者や営業担当者・事務担当者の配置・雇用、ガソリン代をはじめ交通費や通信費等の諸経費、そしてそれらに付随する各種税金や保険料等々…、形のない安定供給というサービスもユーザーにはなかなか評価・値上げ承諾されづらい。「ねじは腐らない」とは云われるが、食品や材木等の有機物でなく金属製でも錆の発生や表面処理の剥離・破損だって起きる。消費するまでのタイムリミットが長いとしても、決して維持管理が不要というわけではない。
またメーカーには高い品質を保証するうえでの厳しい生産管理や認証制度、検査などの保証体制が求められる。一方商社は、こうした生産面での障壁はないものの、専業(プロ)として需要に応じて消費者の手元に必要な分を適正価格で供給する行為に手間・コストがかかって、それにより価値を生み出している―、これを商社は自負として持ちながら、ユーザーに理解を進めてもらわなければならないはずだ。