サプライヤに確度の高い情報を

2022年7月18日

 自動車部品向けメインのファスナーメーカーは、車載向け半導体不足にともなう完成車メーカーの生産計画の乱れにより、生産予測ができずに効率的な生産ができない状況に陥っている。
 少量多品種化が進んでいるからこそ、圧造という量産技術をメインにするファスナーメーカーにとっては生産計画がますます要となるが、完成車メーカーからの内示情報に不確定要素が多く、情報の通りに生産すると注文が入ってこない、正確な情報が入ってこないため、作らないでいると直前になって大量の注文を受けるなど、「作りたくても作れない。計画的な在庫を置けない」といったケースが見られる。
 こうした問題の根源となっている自動車の半導体不足の安定調達に向けて、経済産業省は自動車メーカー各社と「車載用半導体サプライチェーン検討WG」を立ち上げた。今回、中間報告「自動車サプライチェーンの強靭化に向けた取組」を公表した。
 ここでも大きな課題として言及されているのが、「生産計画提示方法」だ。車載半導体のサプライチェーンは完成車メーカー→ティア1サプライヤ→半導体メーカーとなっており、完成車メーカーの生産計画に基づいてティア1サプライヤが半導体メーカーに発注する構図となっている。完成車メーカー側は内示情報として生産計画を6カ月先まで毎月更新して提示するなどの取組みを進めているが、この情報自体の確度が低い。報告書では、「半導体メーカーからのデコミット等が原因で生産現場やサプライヤに急な減産通知を送付せざるを得なかった」としているが、今後について「不足となる可能性が高い部品の影響を生産計画に織り込んで通知する必要がある」と今更指摘している点からして、これまでの生産計画の確度がいかに低いものだったのかが容易に想像できる。WGでは生産計画提示方法の改善や、これにともなう確定注文や買取保証の枠組みの必要性を指摘しているが早急な構築が求められる。
 掲げている対策の中にはサプライヤからの情報提供が不十分であるとして、リスクが顕在化するケースの多いティア2以降のサプライチェーンについて、サプライヤとの情報開示が必要としているが、競合他社や戦略的な秘匿情報がひしめき合う中で、どこまで情報が共有化されるのかは疑問だ。また完成車メーカー側はサプライヤに対してより多くの情報開示を求めているが、そもそも本稿冒頭の問題はユーザーからの情報が入ってこないために陥っている窮状だ。完成車メーカーはカンバン方式の名のもとで実質サプライヤに在庫を肩代わりしてもらっている以上、サプライチェーン全体に混乱をきたさない確度の高い情報を提供する責務がある。

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