先月22日から24日にかけて東京ビッグサイトで「機械要素技術展」が開催された。3日間の来場者数は4万9261人(※主催者速報値)となり、コロナ禍前の19年度開催比でも7割強と復調を印象付ける結果となった。出展社からも「想定よりも来場者が多く驚いている」との声が複数聞かれ、今後関連する展示会も以前のような盛り上がりが期待できるものと思われる。コロナ禍で下火となっていた社会活動の盛り上がりに期待したいところだが現状では物価高騰やインフレといった頭の痛い問題が立ちはだかっている。そしてもちろん鋲螺業界だけの話ではないが材料高騰に伴う価格転嫁の問題も依然として続いている。
鋲螺業界では昨年にひき続き年初から価格改定の対応に追われており、メーカーによっては今年も既に2回値上げを通達しているとことだが現状資源高騰の一因となっているウクライナ危機の収束が不透明である以上今後更なる価格転嫁が必要となる事態が想定される。帝国データバンクが6月8日に公表した「企業の価格転嫁の動向アンケート(2022年6月)」によると、上昇分を満額で転嫁できたのは有効回答企業数1635社のうちわずか6・4%に留まっている。もちろん業種や製品及び流通形態など各社によって事情は異なるため十把一絡げにはできないが、上昇したコスト分に対して適正な対価を受け取っている企業がこれだけ少ないというのは国内産業のあり方は極めて不健全ではないか。なお同調査の調査対象には中小・零細企業だけではなく大企業も含まれており、トータルの数値だけ見ると中小企業に比べて大企業の方が価格転嫁を行えていないというから驚きである。
政府はこうした国内企業の課題を背景として「パートナーシップ構築宣言」の仕組みを創設したり、あるいは下請中小企業振興法の改正を通じて発注者側に価格改定の交渉を年1回以上行うよう促そうとしているが前者には宣言に対する監査が無く後者には罰則が設けられておらず、穿った見方をするなら「年1回だけ交渉すれば後は対応せずとも良い」という下請け側に不利な慣例が拡がりかねない。言うまでもなく価格がこれだけ急激に変動する現状を前に年1度しか交渉を行えないというのは受注者側にとって極めて不利に働くはずだ。大企業と中小企業の「共存共栄」を謳うのであれば中小企業の企業努力だけに頼るのではなく努力に対しては常に適切な対価で報いるべきではないか。政府は下請企業の現状に真摯に向き合い、適切な価格改定が円滑に行えるよう正当な理由なく価格転嫁を拒否する発注者に対してより厳格な態度で臨むべきだ。