コロナ禍もようやく終わりに向かってきたのではないか。東京の感染者数は1日2000人を下回る日が続いているがこれはピーク時の10分の1に相当する数字である。これからのマスク着用についても議論が出始めてきており、オミクロン株の感染爆発により集団免疫が付いたことからもここに来てまた有力な変異株が発生しない限りこのまま収束に向かうものと思われる。
本紙では「ねじの日特集号」(5月30日付発行)に合わせてコロナ禍の影響に関するアンケートを実施したが、コロナ禍による悪影響として対面営業の制限を挙げる企業が多かった。そして影響の度合いについて「非常に良い」から「非常に悪い」まで5つの選択肢を設けたところ、「非常に良い影響を与えている」と答えた企業がいなかったのはともかくとして「非常に悪い影響を与えている」と答えた企業もまた全体の5%に留まっていたのが印象的だった。「悪い影響を与えている」が全体の48%とほぼ半数に迫ったことから少なくとも良い出来事ではないのは確かだが、当初懸念されていたようなリーマンショックを上回る悪影響が起きているかと言えばことコロナ禍に要素を限って言えば違うのではないか。鋲螺業界を見ているとコロナ禍が発生した20年と21年共に上半期こそ落ち込んだが下半期は回復基調に向かっていたように思う。特に前年業績(21年)については鋼材価格が高騰した影響もあり、各社の売上を大きく押し上げた要因となっている。今年も下半期以降に期待したいところだが、その前に昨年から続いている価格改定への対応について考えなければならないだろう。
メーカー毎に事情は異なると思われるが、今年の値上げについては鉄製品を見ると中ボルトなど製品によっては2回の価格改定が既にアナウンスされており、鋼材価格は元より各種資材や電気代など経営コストの上昇分を織り込んだ形での要請となっているようだ。またステンレス製品についてもウクライナ危機によるニッケル価格急騰の影響もあって価格が大きく上昇している。同じく本紙アンケートによれば昨年にかけて実施された価格改定については全体の84%が「反映できた」と答えてはいるが、そのうちの52%は「一部反映できた」と回答しており、異なる角度から見れば「概ね反映できた」と回答した32%を除くおよそ7割の企業が上昇コストを適正な水準まで反映できていないということになる。そして価格改定の課題については多くの企業が「発注側企業の理解」そして「双方が納得できる根拠の明示」を課題として挙げている点について、例えば日本ねじ工業協会は統計データを公表しているが、業界のマイルストーンとなる資料の存在は業界にとって必ず有益なものになるのではないか。