5月3日は憲法記念日、第二次世界大戦の戦勝国ソ連は崩壊したが継承国として国連常任理事国のロシアがウクライナに侵攻し、大戦後の世界秩序の根幹となる領土不拡大等がなされていない事が看過できないところまで来たと言っていいだろう。
日本国憲法はこの戦後秩序を前提にできていると言っても過言ではないが、改憲論議の的になる「第九条戦争の放棄」だけでなく、70余年を経てテクノロジーの進歩や生活様式・価値観・産業構造の変化もあり、個人の生活から企業の経済活動まで様々な点で考え直し・再評価する機会が必要だ。
経済活動(産業・営業)に関しては「第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」「第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」とあり、勤労は義務であるとともに経済活動の自由という権利でもある。
新型コロナウイルス感染症で移動の自由の制限について問題となったが時評子が携わる報道や、貨物に対する物流業だけでなく旅客も含めた運輸・輸送業、さらに郵便業まで、移動をしないと仕事にならない職業もある。
また「第二十九条 財産権は、これを侵してはならない」「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」とあり、これは私有財産制、さらには資本主義の大前提となっている。
しかし地震や火山活動・津波といった自然災害だけでなく、武力攻撃といった非常事態においてどこまで制限できるのか?制限したとしてもどこまでが正当な補償とされるのか?例えば緊急車両の移動経路上として家屋や事業所を取り壊す必要があったら?行政に物資の提供を求められたら?―とあらゆる事態に対して問題が発生するはずだ。
また今回のウクライナ―ロシア間の戦争ではドローンに日本製カメラが部品として使用されているといわれているが、軍事用の技術は日々ハイテク化され、民生用と軍事用の境目は曖昧な事が再認識された。
工業製品において、ねじは単体で用を成す事はまずないが接合・締結で幅広く使われる。もし製造している部品が直接的であれ間接的であれ自国及び同盟国の敵対国、そして国際秩序に反する国において軍事用に転用されていると分かったら?利敵行為が経済活動の自由で保障されてしまう可能性もある。
憲法は遠い存在ではない。憲法上の理念と現実の国際情勢・経済活動のせめぎ合いは政治の場だけでなく国民の生活から企業の経済活動、日常から非常事態にまで影響するのを忘れてはならない。