鋲螺業界を見ると、昨年秋頃からはコロナ禍が小康状態に入ったこともあって盛り上がりの動きを見せていたが年明け以降はオミクロン株の感染爆発から先行き不透明感が強まり、一部分野を除いて昨秋以前の状況に逆戻りしてしまった感がある。また昨年は価格改定の動きが大きく分けて2回あり値上げ前の駆け込み需要も見られたが、現状盛り上がりを欠いたまま期末の在庫調整局面に入ったと考えるなら少なくとも春先までは現行の停滞感が続くものと思われる。今年は更にコロナ禍からの回復傾向が更に強まると見られていたが年初からオミクロン株の感染拡大に冷や水を浴びせられた形だ。
一方で昨年を通じて品薄状態が続いていた六角穴付きボルトについては年明け以降も同じく品薄の状態が続いており、メーカー筋によると昨年初頭以来落ち込みを見せることなく高い水準を維持し続けているという。特にステンレス製品については供給が非常にタイトな状態が続いている。関係筋によれば特殊鋼メーカーもステンレス鋼についてはフル生産に入っているが、肝心の(ボルト用の)材料が入って来ないとのことで、当面品薄の状況が続くものと思われる。
景況感に話を戻すなら昨年は自動車、半導体産業を筆頭に工作機械、建機、鉱山機械など多くの分野で一昨年(20年)の落ち込みから回復する形となった。22年も前年に引き続き回復傾向が続くものと予想されるが鋼材価格の高止まりや半導体不足など昨年大きな注目を集めた問題は解決されておらず、まだしばらくの間厳しい時間が続くのは間違いないだろう。
また、オミクロン株の流行が国内経済に悪影響を及ぼし続けている。年明けから始まった第6波は留まるところを知らず、ついに一日当たりの感染者数は10万人を突破してしまった。2月中旬以降は感染者数の増加傾向に若干減速感が出てきたが極めて高い水準にあることに変わりはなく、鋲螺業界においてもコロナ陽性等による自宅待機者が多数出たことを受けて現場が人手不足に悩まされるケースが散見されている。政府は今月初めにようやくエッセンシャルワーカーを中心に自宅待機期間を見直す方針をまとめたがスピード感に欠ける対応と言わざるを得ない。似たような事例として政府はデルタ株まん延時と同様に外国人の入国を原則として拒否しているが、このために投資案件の保留や日本市場への投資見直しなど機会損失を懸念する声が挙がっている。原則論に終始するのであれば単なる責任逃れでしかなく、国のリーダーとしても相応しくないだろう。コロナ禍の影響を最小限に留めるためにも政府は現状に即した施策を実行するべきだ。