専門的な意見と総合的な判断のバランス

2022年2月7日

 1月15日午後1時ごろ(日本時間)に南太平洋にあるトンガで発生したフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火。気象庁は当初「津波の心配はない」としたが、潮位変化が大きく16日まで津波警報・注意報を発令する事となった。この問題は津波の定義とされる「地震・火山活動や山体崩壊・隕石衝突に起因する海底・海岸地形の急変により、海洋に生じる大規模な波の伝播現象」よりも「火山活動による気圧変化で起きた高潮」に近い事が発令の判断が遅れた一因とされている。
 太平洋は各地に潮位計が設置され太平洋津波警戒・減災システムが構築されており、日本も地震大国としてデータが蓄積されていたとしても、想定外の事態で専門家すら会見で「分からないことが起きている」と話しているのだから、自然はまだまだ未知の領域だ。しかし専門家や科学者が「津波ではない」としても、実際の沿岸部にとっては「津波も同然」には変わらない。今回の津波警報・注意報は自然科学としてではなく社会として防災上の観点から発令されているといってもいい。
 これは長期的に続いている新型コロナウイルス感染症の専門家会議・現場関係者と政府の認識のズレ・温度差も同じだろう。菌もウイルスも目に見えない病原体(キノコのようなのは別として)には変わらないと言ってしまえばそれまでだが、一部の政府関係者が新型コロナウイルスを「コロナ菌」と言っていたり、マスクから鼻を出していたり、有効性に疑問が持たれている消毒液や除菌液を噴霧する「空間除菌」で対策しようしていると、専門家の言いたい事を理解する為に門外漢でも科学リテラシーのようなある程度の知識・勉強、さらにいえば意見を尊重・理解しようとする姿勢も重要だ。
 これはどんな会社や組織にも通じるかもしれない。効率的に業務を行う為には営業畑・製造等の現場畑・経理等の事務畑―等々分業を進めるが故に起きる部署毎の温度差や方針の違いが生じる。「質か?量か?」のように性能や品質が高いからと言っても製品が売れるか否かとは別の問題だったり、事業所が多くなれば担当地域毎の産業構造やユーザーの傾向・ニーズ、そして商習慣の違いもある。また或るメーカーには入社したらその後どの部署に配属かに関係なくまずは製造現場で研修―という方針をとる例もあるが、研修に限らず部署・担当を超えた相互理解も重要なはずだ。
 そしてエキスパート=専門家を育て上げる事を目標にしつつも、会社としてモノ・カネ・ヒトといった経営資源を何に注力するか?どの経営方針で進めるか?それぞれの意見を汲みながら調整して総合的な判断をする上役・経営陣の度量・自覚も必要だ。

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