このまま五輪が開催されたなら4度目の「緊急事態宣言」もあり得るだろうか。大手メディアがまとめた統計によると今月3日時点で少なくともワクチンを1回接種したのは総人口の24・5%で、そのうち65%が65歳以上の高齢者に対する接種となっている。現状接種対象は高齢者中心となっており、2回の接種を終えたのは全人口の1割弱に留まるというとても国際的なイベントなど行えない状況となっている。
そんな中職域接種が始まったことで新型コロナワクチンの普及が加速するかと思いきや、政府は実施から一月も経たないうちに新規受付を停止している。ワクチンの在庫不足とのことだが幅広い年齢層への接種を加速させようとした結果かえって混乱を深める結果となり、調整役を欠いたずさんな計画だと言わざるを得ない。鋲螺業界でも合同職域接種の実施のため業務の合間を縫って準備を進めてきた企業が直前となって在庫不足のためワクチンを供給できないとの連絡を受けるなど、企業を助けるどころかかえって余計な重荷を背負わせてしまっている始末だ。政府は現状の機能不全を深刻に受け止め、企業の努力に誠意をもって応えるべきだ。
国内ではワクチンの普及にストップがかかってしまったが、景況感に関しては主に一足早くコロナ禍から脱しつつある北米及び中国に牽引される形で複数の分野で動きが出始めている。建機工が発表した5月の建設出荷金額は前年比54・8%増で、中でも輸出向けは同90・2%増となった。発表に住宅市場が活況を呈している北米をはじめ、欧州など複数の地域で回復が見られたという。また世界的な鉄鉱石の需要増大を受け鉱山機械についても回復の兆しが見えている。この他にもコロナ禍でも活況を呈している半導体分野に関して、日本半導体製造装置協会は今月1日に21年度の国産半導体製造装置について前年度比22・5%増となる予測を発表した。1月時点の予測を上方修正した形で引き続き旺盛な需要が見込めそうだ。
鋲螺業界についても回復分野については特定のねじ類の需要が高まっており、一部サイズの六角穴付ボルトについては品薄状態が続いているほか、また高力ボルトについても太径サイズの不足から始まり現在は幅広いサイズで品薄の状態となっているとのことだ。鋼材価格の上昇や輸入製品の価格変動など決して楽な経営環境にはないが、五輪が終われば経済活動が本格的に動き出すとの見方もあり、出口まではあと少しだろうか。願わくはワクチンの普及と共に迎えたいものである。