先月末からトヨタ自動車の株価が上場来高値を更新し、時価総額は30兆円を超えた。2020年、EVを積極的に展開する米国テスラ社の時価総額がトヨタを上回ったことが関心事となっていたが、ここにきて規模と実力が伴うトヨタの底力が表立ってきた。
自動車において、昨年度は世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き多くの地域で大幅な前年実績割れとなっていた。実際、トヨタの連結販売台数も14・6%の減少だった。
一方、今年度の見通しは連結販売台数で13・8%増、業績面では増収増益を見込む。トヨタは「つくるモノが変わったとしても、お客様の幸せを追求することは変わらない」という考えを明確化しており、100年に一度の大変革期を迎えた取り組みが、形として実を結び始めている事に期待したい。
建築業界では木材の調達が困難になり価格が上昇する「ウッドショック」を懸念する声が高まっている。グローバルでの木材需要の拡大やコンテナ不足がその原因とされる。減少傾向にある住宅着工件数に追い打ちをかける材料価格の上昇だけに、不安が広がっている。
グローバルでは、アメリカで経済政策による住宅需要の急増があったほか、中国経済の急回復による木材需要の高まりもあった。結果として需給が逼迫し、主要な木材産地の北米・欧州からの輸入木材が高騰。消費者物価が低調な日本では川下へのコスト転嫁が容易では無く、他国に「買い負け」する様相を呈しているという。さらにコンテナ船の不足が追い打ちをかける。各国で巣ごもり需要が拡大し、木材を運搬する船の確保が難しい。
木材や半導体といったモノの逼迫や、物流の渋滞がグローバルなトレンドとして挙がっている。いびつな急回復・急成長にはしわ寄せが付き物だ。急激に熱するものが急激に冷めるように、バランスを欠いた需給動向が各所で見られる様になった。
ワクチン接種先進国においては消費者心理が改善し、個人消費の回復や、移動の活性化をもたらしている事だろう。日本でも集団免疫の獲得に向けて急ピッチで接種が進む。接種がある程度進み、ムードの転換が起きれば、非製造業の持ち直しが期待できるのではなかろうか。その一方で、鉱工業生産指数を例にとっても、やはり製造業の景況感は堅調と言える。
ねじ業界は社歴の長い会社が多く、これまで幾多の経済危機を乗り越えてきたものと思われる。およそ10年周期でこういった危機が必ず訪れるということを前提にしながら、しぶとく、我慢強く、夜明けを待ちたい。