進まないワクチン接種、回復に向け加速を

2021年5月24日

 三度目の緊急事態宣言が延長されてから二週間が過ぎた。都市部の感染者数は再び減少傾向を見せているが、このような光景をもう何度も目の当たりにしているのは気のせいではないだろう。しかし幸いにもと言うべきか、景況感に関しては昨年と異なり希望が持てる内容となっている。コロナ禍における経済動向は「K字型」を示していると言われて久しいが、飲食業やサービス業など極めて厳しい状況が続いている業種がある一方で半導体や自動車を筆頭に製造業に関しては回復基調が鮮明になっている。鋲螺業界を見ても昨年と同時期に緊急事態宣言が発令されたのにも関わらず落ち込みはそこまで見られず、むしろコロナ前の水準に近づくまでに回復している企業も散見される。海外に目をやると米国など一部の先進国ではワクチン接種が進んだことを受けて今後は経済活動を更に加速させていくとも報じられており、今後はこうした回復基調が更に強まっていくものと期待できる。外需の回復は国内経済にとって間違いなくプラスに働くだろうが、特に中国市場における旺盛な需要を受け今後鋼材価格は更に上がっていくとの見方がある。また国内の鋼材需給状況は年始以来タイトな状況が続いており、鋲螺類においても一部製品によっては「仕事はあるがモノが無い」状態が続いているという。鋼材市況については引き続き注視していく必要があるだろう。
 さて、その肝心なワクチン接種である。政府は7月末に希望する高齢者への接種を終えるよう取り組んでいくとしているが一般接種のスケジュールについては見通しが立っていない模様だ。そして「K字」の中でも好調な分野とて結局のところ最後はワクチンの存在が無ければ、コロナ禍により人の流れが阻害されている状況が変わらなければ完全な回復は難しいのではないか。日本社会はコロナ禍を受けてデジタル技術の活用が進み、ビジネスにおいてはリモートワークの導入が一気に進んだとされている。リモート技術はビジネスの根幹と思われていた「人の移動」から無駄な部分を腑分け、そして同時に人の存在が欠かせない場面を浮き彫りにもした。コロナ禍であろうと対面が求められる場面は確かに存在しており、ワクチンの不在が企業にとって余計な足かせとなってしまっている。ある機械メーカーでは人手が足りない中1カ月の待機期間が発生することを承知の上で止むを得ず海外案件に対応しているという。体力のある大企業ならともかく中小企業にとってはワクチンの無い中海外との取引を続けていくのは困難が伴うだろう。ワクチンの普及の遅れは経済の衰退、ひいては国力の減衰に関わる。政府はより緊張感を持ってワクチンの普及に取り組むべきだ。

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