景気の先行指標と言われる工作機械の受注額が、2月は19カ月ぶりに1000億円を上回った。そのうち外需は前年同月比66%増の750億円と、海外からの旺盛な需要が伺える。昨年はコロナ禍により景気後退を余儀なくされた世界経済だが、製造業が健闘しリバウンドに貢献している。
対面を伴う各種サービス業は未だ厳しい状況を強いられている一方で、コロナ禍を追い風とするITセクターが株高を牽引する。株価と実体経済はもはや連動しておらず、街角景気は依然として低迷したままだ。
新型コロナを克服すればこれまで自粛によって抑制されていた欲望が一気に噴き出すという観測もある。一説ではコロナ期間中に蓄えられた過剰貯蓄が大幅に上振れていると言われており、消費回復による経済活性化の起爆剤として期待される。
経済は、新型コロナ対応型から徐々に平常へと戻ろうとしている印象を受ける。しかし、ここで言う“平常”とは、コロナ前の平常とは異なるものになるという観測が大半だ。その要因の一つとしてコロナ禍によってデジタル化が加速したことが挙げられる。
例えばWeb会議によって遠方まで出張しなくて良くなり、また、在宅勤務によって満員電車に乗る必要が無くなったという新習慣を人々が経験した今、コロナ前の習慣には戻れないという感覚はとても理解できる。だがその一方で、ヒトという“動物”がそこまで素直に変化できるのか?という懐疑的な視点もまた理解できる。
前述の「過剰貯蓄が噴き出す」という希望的観測では、噴き出すマネーはコロナ禍で抑制されていた欲望を原動力とする。我々ヒトの欲望とは詰まるところ「人に会って密を形成したい」というものだ。Web会議ツールを例にとってみても、「画面越しで腹を割って話す」という体験をヒトは人類史上やったことが無かった。故にヒトの生理がデジタルよりもリアルを求めるのは自然だ。また、ビジネスは信頼によって成り立つのだからWeb以上に対面を重んじる向きがあっても理解できる。しかし、折角加速したデジタル化だ。アフターコロナの世の中でも継続して活かされて欲しい。
気温の上昇やワクチン接種の広がりに伴ってアフターコロナを話題にしたくなるが、変異株の国内感染事例もあり全く油断は出来ない。感染対策を行う人からすれば「皆が我慢した事がピークアウトを迎えた一つの要因だ」と言うし、感染対策を行わない人からすれば「何もしなくても感染しておらず、ピークアウトした」となる。今のところ正解が不明なので両者は折り合うことが無い。正解が無いので“正しさ”も無い。