注目集まる再構築補助金、中小製造業に光を

2021年3月1日

 依然として連日数百名の新規感染者が出ている現状があるとはいえ、1月上旬に見られたような爆発的な感染拡大に比べればかなり落ち着いてきたのではないか。しかしコロナ禍もさることながら、昨年末頃から表面化した車載半導体の不足問題をはじめ豪雪による被害や、また海外に目をやればミャンマーで軍事クーデターが発生するなど複数の予期せぬ出来事が国内外の経済活動に苦境をもたらしている。
 経済に大きな影響を及ぼす出来事が毎年のように起こる昨今ではリスクヘッジの重要性が度々指摘されるようになったが、年初から次々と訪れる災難を前に現代の経営は多方面におけるリスクと隣り合わせであることを再認識させられた。それこそ「アフターコロナ」に焦点を当てるのであればこれだけの災禍に見舞われながら自助努力で対処せよ、というのは酷な話だ。経済の再起動は国の後押しがあればより円滑に進むというものだろう。
 今月から公募が始まるとされているが、さて、この「後押し」はうまく行くだろうか。国は中小企業等を対象に事業の再構築及び業態転換を支援する「事業再構築補助金」の公募を始めようとしている。補助総額は1兆1000億円に上るとされており、中小企業から中堅企業への成長を促す「卒業枠」が設けられるなど意欲的な内容となっている。国が示す活用イメージとしては新サービスの立ち上げや新分野への進出といった華々しいものが見られ、特に一部業種の事例を見ているとコロナ禍における非接触の需要を呼び水として政府が国内中小企業の課題として挙げている「デジタル技術の活用」も併せて進めていこうという思惑が透けて見えるかのようだ。
 しかし既存の建物及び設備の撤去、また教育訓練を念頭においた研修費も補助対象に含まれている点を考慮するなら、ねじ業界に関していえば自社が強みとする製品に焦点を当てた設備更新や洗浄・梱包といった後工程への投資を通じた業務効率の改善、パーツ製品や非鉄製品、難加工材などより付加価値のある分野への進出といった既存の補助金とさほど変わらない活用の仕方がまず思い浮かぶ。あるいは業界外の人間からすれば既存路線の延長としか映らないかもしれないが、ねじという不変の機械要素を前に地道に改善・改良を続けてきたのがねじ産業の歴史である。政府は間違っても「ポストコロナ・ウィズコロナ」という言葉に見合う華々しい事業計画ばかりを実績として選定するようなことはせず、コロナ禍に苦しむ中小製造業の前向きな取り組みをしっかりと掬い上げて欲しい。日本のモノづくりを支える中小企業の刷新を助けることは必ず国内経済の活性化に繋がるはずだ。

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