コロナ禍に見舞われてからそろそろ1年が経とうとしているが、ようやく経済回復の兆しが見えて来たのではないか。10月から回復の動きが確認されており、各業界団体による受注統計を見ても数値として明白に表れている。例えば(一社)日本工作機械工業会が先月11日に発表した10月の受注統計は前年同月比5・9%減の823憶円で、前月からマイナス幅が改善されていることが確認できる。鋲螺業界に目をやるとあるナットメーカーでは自動車向け製品の回復を受け、およそ半年ぶりに対前年同月比でプラスとなったという話も出てきた。他方商社に目をやると、在阪商社では10月から若干動きが出てきたという声があり、一時1~2割程度の減少を経て前年同月比5%減程度のところまで戻って来た、との話が聞かれた。年末から年初にかけて更なる動きを期待する声が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い雲行きが怪しくなりつつある。欧州では依然として厳しい状態が続いており、ロックダウンによる経済停滞が懸念されている。
国内においてもコロナ禍は第三波が到来したと見て間違いないだろう。新型コロナウイルスの国内感染者数は9月以降1日600人程度のペースで推移していたが、11月初旬から急激な増加を見せ、同月中旬の3連休頃には連日2000人を超えるなど過去に例を見ない拡がりが見られた。しかし陽性者数が爆発的に増加した一方で重症者数の比率は第一波に該当するGW頃と比較すると低く抑えられており、陽性者数の急激な増加にある背景としてPCR検査の実施件数の増加が指摘されている。もちろんそれだけではなく、「Go To トラベル」をはじめとした政府事業の存在があるだろう。
第三波の到来についてこれら政府事業に責任を負わせようとする向きもあるが、現段階においてもやはり有効な治療法が確立されていない以上、人の動きが活発になればこのような事態を引き起こすのは初めから分かっていたことではないか。各種キャンペーンについては現在キャンセル料の扱いや中止ではなく「一時停止」している各事業が今後どのようになるのかを巡って若干の混乱が見られるが、混乱によるタイムラグを許容できる余裕は無いはずだ。安易に結び付けることは慎まなければならないが、コロナ禍が長引く中各報道機関より自殺者数の増加が指摘されている。経済活動が止まれば生きる糧を得る手段を失う人が数多く出てくるだろう。「カネか命か」と安易で感情的な二元論に陥ることなく、どちらも守るために政府は明確な道筋を示すべきだ。