日本のデジタル化、いよいよ本格化へ

2020年10月19日

 菅新政権の肝いりの政策がデジタル化だ。ITシステムと連動することで社会をより効率化して便利にしようという動きは、何も昨日今日から始まったものではないが、行政手続きにおける判子やFAX廃止に向けた動きが象徴するように、コロナを機に、当たり前にようにあった旧来の産物がいよいよデジタル化によりお役御免の日が近づいたと言える。
 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が生まれた通り、デジタル化が旧来の仕事やサービスの価値を180度変えられる力を持つまでになろうとしている。モノづくりの業界はどうか。製品を現場で作る、扱う業界はデジタルの世界には馴染まないという意見がこれまで根強かったが、その考えは変わりつつあるのではないか。
 例えば、これまで頻繁に行われてきたサプライヤー工場への品質監査はコロナにより激減してしまったが、市販のミラーレス一眼カメラをPCに接続して現場を撮影することでリアルタイムに映像を配信することが可能だ。ウェブ会議ツールを組み合わせれば、互いに会話をしながら品質確認のやり取りができるだろう。一部の工作機械メーカーは、納品直前のユーザーへの操作説明を、出荷前の自社工場で遠隔で行うサービスに切り替えている。
 NC機械と比べてデジタル化に馴染みにくいとされていた圧造機や転造機の加工設備に全てIoT機器を搭載したファスナーメーカーがある。これまで大まかな重量ベースで管理していた生産を、1本単位の本数ベースで管理することが可能となり、各機械の稼働率や人の技術を本数という数値で見える化したことで、大幅な効率化を進めている。
 デジタル化により「ねじ」そのものの価値も上がるかも知れない。ロボットによる自動化ラインに対応した特殊リセスねじと締結システムに注目するメーカーは、チョコ停を防ぎロボットを小型化できる新システムを開発した。これによる省力化、省スペース化、自動化のコスト削減効果は、ねじ1本の単価を数銭レベル下げた程度のレベルではないと強調する。これはねじに大幅な付加価値を付けられることを意味する。
 調達工程にもデジタル革新が生まれている。原価計算や加工工程を把握したノウハウを自動見積システムに落とし込むことで、ユーザーがアップロードした図面データから、相見積もりすることなく最適なサプライヤー一社に選定。さらに自社で物流機能を持ち、検査、納品までを行うモノづくり系IT企業が登場している。調達工程のデジタル化は、商社にも応用できる仕組みと言えるのではないか。
 遅いと言われてきた日本のデジタル化、いよいよ本格始動する。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。