国勢調査100周年、統計・アンケートの意義

2020年10月12日

 今年は5年に1度の国勢調査。大正9(1920)年の調査開始から21回目で100周年になり、調査票・インターネット回答ともに10月7日に締め切られた。人及び世帯に関する全数調査で、国及び地方公共団体における各種行政施策その他の基礎資料を得る事を目的とした同調査。改めて用紙を見てみると、世帯の構成・教育・事業(仕事)―等を調査し、これを元に国民のライフスタイル、地域(都道府県)、さらに国全体を把握するのだろうと窺い知れる。しかし問題は近年の40%に満たない回答率の低さだ。「何か」を周知徹底して、それに対して必要な行動をとってもらう―、これは意外と難しい。
 奇しくも今年は新型コロナウイルス感染症対策の一環として10万円の特別定額給付金があり、世帯給付率約95%(総務省調査)が達成されている。これで国民は直接的な利益となる場合、どれぐらいの比率で反応・行動するかが分かってしまったといってもいいだろう。
 かつて平成23(2011)年にテレビの地上波放送がデジタル方式に切り替わる際、総務省は「地デジカ」なるキャラクターを作ってCMしたが、未だに世の中にはアナログとデジタル放送の違いで区別がつかない層がいたり、「何でデジタルチューナー付きへ買い替えるのに自分の金を払わなければいけないの?」という意見もある。
 アンケート回答をはじめ、人は何故協力してくれないのか?端的にいえば「手間分以上に得にならない」、逆に調査=協力を依頼する側が「タダで人に協力してもらおう」という発想も限界があるのかもしれない。自分達の協力が間接的であれ直接的であれ得になると実感出来れば、回答率95%だって可能かもしれない。
 これは毎回投票率の低さが問題とされている選挙にも通じる。被選挙人を調べて投票するという行為は、ある種のアンケート=調査ともいえないだろうか?そして回答の母数が多ければ多いほど、より正確な「意見=民意」となる。一方で諸外国では選挙に投票しないと罰金等のペナルティを課す事例もあるが、これは「得をしたい」でなく「損をしたくない」という感情で人を動かしているとも考えられる。また、公約・口約・マニフェスト…と、言い方がどんなに変わろうが、選挙が終わったら主張していた政策・方針が実行されないのでは、投票する気が無くなるのは当然だろう。
 統計やアンケートから割り出された結果を真摯に受け止め、実情・意見に向き合う姿勢が期待できて結果的に自分達の得になると理解されなければ、協力・回答を得るのは難しいはずだ。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。