より実践に近くなる製造技能検定に期待

2020年8月24日

 (一社)日本ねじ工業協会の2020年事業計画によると、ねじ製造者の一定の技能を協会が認める「ねじ製造技能検定」において実技試験に実機を導入することを検討していることがわかった。より実践に近い技術を評価する検定となり、実現に向けた今年度の取り組みに期待したい。
 ねじ協が認定する「ねじ製造技能検定」は、製造従事者の経済的、社会的地位向上を目的に毎年1回試験を実施している制度だ。自社で働く現場社員の技術を第三者の視点から評価することは、社内の評価制度を標準化することにも役立ち、社員のモチベーション向上にもつながる取組みといえるだろう。毎年2月に、東京、名古屋、大阪の3会場で実施され、19年度の2級試験は受験者数129名のうち67名が合格している。検定に先立ち講習会も開催されており、ねじ製造技能検定ハンドブックを教科書にして、筆記、実技の両試験に対応した内容を学ぶことができる。
 これまでの実技試験については、JIS製図の基本知識とボルト製品の各部名称の知識を評価するための要素試験(ペーパーテスト)と作業試験(作図、測定)のみが行われていた。また、受験者の担当している設備に応じて、ボルトフォーマー工作業、ナットフォーマー工作業、ローリング工作業、タッピング工作業をいずれかの科目を選択して、その設備の加工技術や金型組立、分解や保守・点検の技能等を筆記で評価していた。
 実機試験導入にあたっては、これら設備を実際に操作して評価する試験へと移行するものと思われる。事業計画によると実機実技試験のための新たな講習会の実施とハンドブックの改訂も検討するという。またこれに向けて「検定制度を構築するための実態に合った技能のレベル分けも行って、客観的で適切な評価基準で試験が行えるような実機を使ったトライアル試験を実施する」としている。
 さらに、これにともなう検定員の拡充やレベル向上のための育成プロジェクトも計画するという。
 コロナ禍の時間を有効活用して現場社員の技術教育に力を入れようとするメーカーが多いだろう。工程の自動化や標準化を突き進めていく中、現場社員の加工技術に対する知識がなくても製品を造れてしまう環境を危惧する声もある。知識がなければ手に取ったものが良い製品なのか、悪い製品なのかさえ判断することができなくなってしまう。良い人と良い生産環境が組み合わさって初めて良い製品が出来上がるはずだ。残念ながら20年度の「ねじ製造技能検定」は新型コロナ感染拡大の影響で講習会とともに中止となったが、より実践に近づく新たな「ねじ製造技能検定」に期待したい。

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