影落とすコロナ禍、一部では明るい動きも

2020年7月13日

 国内の経済情勢は新型コロナウイルスの影響により厳しい状況が続いている。自動車業界をはじめ多方面の産業において厳しい予測が並ぶ中、鋲螺類の流通に関してもその影響が統計の数値にも明白に表れてきた。本紙でも既報の通り、財務省による貿易統計によると5月の輸出実績は数量・金額共に対前年比でおよそ4割の減少となっており、リーマンショックの影響を受け景気が低迷していた2009年よりおよそ11年ぶりに3割を超える減少幅を記録する形となった。なお、直近の輸出実績を見ると今年の3月~5月までは3カ月連続で数量・金額共に二桁以上の減少となっており、詳細に見ると3月より徐々に減少幅が拡大するなど厳しい内容となっている。前回輸出が大きく落ち込んだリーマンショック後の時は2008年11月より8カ月にわたり二桁の減少が続き、うち2カ月は数量・金額共に5割以上の減少となっていた。コロナ禍の影響はリーマンショックを超えるとも指摘する声もあるが、今後の輸出がどれほど落ち込むか注意が必要だろう。
 依然として厳しい状況が続いているが、半導体関連など一部の分野では明るい話題も聞こえ始めているようだ。日本半導体製造装置協会が今月2日に出した需要動向予測によると2020年度の販売額に関しては前年比7%増と、大半の業界がマイナス予測を出している中プラス予測を示している。特に中国市場においては米中による貿易摩擦の影響を受け半導体の国産化を進める動きもあり、今後の需要動向が注目される。一方で土木建設に関しては、足元では既に決まっていた首都近郊などの物件で一部底堅い動きが見られるも新設住宅が厳しい状況にあるのに加え、東京五輪の開催予定が不透明であるため首都の大型物件に関しては先行きが不透明な状態が続いているとのことだ。なお、在阪ねじ商社の業況を聞くと現状では対前年比で概ね1割を超える程度の減少との回答が複数聞かれた。先に触れたとおりリーマンショックの際は半年程度不況が続いたとのことだが、現状特に消費マインドの劇的な回復が見込めない以上残念ながら苦しい時期が続くものと思われる。
 緊急事態宣言が初めて発令されてから3カ月以上の時が流れた。小欄もこれまで幾度となく新型コロナ関連について述べてきたが、首都において第二派の懸念が見られるもひとまずようやく小康状態まで辿り着いた、と言えるのではなかろうか。ビジネス目的の海外渡航もベトナムやタイ、国内ねじ産業とは繋がりが深い国の一つである台湾など複数の相手国を対象として入国規制緩和の調整が進められているという。渡航再開に伴う再流行の懸念もあるも、巷でも“ウィズコロナ”と言われているように一歩一歩コロナと共存しながらかつての水準まで近づいていきたい。

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