コロナ禍の補償、政府はきめ細やかな対応を

2020年6月15日

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、経済活動が徐々に再開され始めてからそろそろ半月が経とうとしている。特に緊急事態宣言の発令以降、マスクの着用や手指の消毒そして“3密”の回避などはすっかり日常の風景になっているが、これ以上経済にダメージを与えないためにも警戒は怠らないようにしたい。経済がゆっくりと動き始めている一方で会合や行事は依然として自粛ムードが続いており、業界では大阪の組合による毎年恒例の野球大会が今年は中止となってしまった。また来年、この困難を乗り越えた後で快音がグラウンドに響き渡ることを期待したい。
 足元の景況感を見ると、既に報じられているように自動車メーカー各社の厳しい業況があり、また関西圏ではインバウンド関連の案件が冷え込んでいることからも“産業の塩”たるねじ業界においても厳しい局面が続いている。特に5月末から6月初旬以降はメーカーのみならず卸でも停滞感が本格的に漂い始め、各社が生産調整や雇用調整といった対応に追われる形となっている。また、特に1件あたりの期間と金額が大きい機械メーカーでは緊急事態宣言中に営業活動が行えなかった影響が半年後や場合によっては1年後などに響いてくる可能性が考えられ、これでは緊急支援策の対応期間が終わってから厳しい局面を迎える形となってしまう。政府には特定の業種に偏らないきめ細やかな対応を求めたい。
 ところで改めて考えてみると、コロナ禍は既存の習慣、特にこれまでの働き方を大きく揺さぶったことは間違いない。その影響は例えばテレワークの浸透やオンライン会議の実施、また不急不要の訪問及び会議を避けるといった点に表れているが、その根底にあるのは「無駄を省く」という点にあるのではなかろうか。言い換えるならば、仕事は必ずしも毎日通勤する必要はなく、必ずしも実際に面会する必要もなく、そしてそのどちらもこれまで通りに人的リソースを投入するよりも別の仕事に取り組むかその分のコストをカットした方が良いということに日本社会が気付き始めたのではないか。ただ、他方で共同作業や人材の育成までも全てリモートで行えるかどうかは疑わしく、テレワークを推進した結果人が育たなくなった…ということは避けたい。
 コロナ禍をむしろ良い機会としてとらえようとする動きはそこかしこに見られるが、高度成長期以降連綿と続いてきた“カイシャ”の働き方を見直す機会になったのは間違いないだろうと思う。将来コロナ禍が終息した際、元に戻るものもあるだろうが良い取り組みは積極的に残していきたい。

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