緊急事態、株価でない?”株を上げた”企業

2020年5月25日

 有限会社、株式会社、合資会社、合名会社…。企業にとって事業の元手=運転資金となる資本金の調達には様々な方法があり、それにより法人の体制とそれを示す名称となる。現代日本において最も一般的なのは、株券を発行して資金調達する株式会社だろう。3月期決算発表の時期となったが、多くの株式会社は株主となっていただいたお礼として配当金や株主優待を発表する。最近ではバラエティ番組において、株の配当で生活、そして株主優待をフル活用して娯楽・遊興している株主が紹介され話題となっている。
 株券は本来、企業の方針に賛同した証でもある。大航海時代に遠隔地からの品物を仕入れる為に従来は単発で行っていた危険を伴う航海を継続的に行えるよう、歴史上初の本格的な株式会社となったオランダ東インド会社では広く出資者を募るべく、その株券が譲渡され売買・投機対象となる事を前提にしていた。現代において世界各国の証券取引所では日々刻々と株価が変動し、政治の世界では平均株価が経済の指標のように扱われているが、これは配当や株主優待以上に投機対象となる事を見据えており、実体経済とは少なからず乖離した今後の業績への「期待値」である点を忘れてはならないはずだ。
 そして?株(株価)を上げる”という言葉には、転じて別の意味もある、「世間の評価・信頼」「企業イメージ・ブランド」だ。新型コロナウイルス感染症の拡大を機に世界中で株価が下落し「世界大恐慌」以上ともいわれているが、様々な企業が貢献して?株を上げた”はずだ。
 感染者発生で横浜港に停泊していたクルーズ船に食事を差し入れた食品製造販売業者。消毒液としての使用目的で生産ラインを応用して消毒用アルコール製造に切り替えた酒造メーカーに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を事業所近隣の住民へ無償配布したメーカー。マスク・消毒液・体温計の購入目的で客が殺到して忙しくなった薬局や、外出自粛により自宅での調理が増えた事を背景に混雑するようになったスーパーマーケットでは、従業員にボーナスの支給や「従業員の体と心のリフレッシュ」を目的に臨時店休。アルバイトが出来なくなり困窮する学生向けに意識調査やデジタル関連サービスの試験利用(を想定)でのアルバイトを募集した金融機関。軽度の発症や未発症の感染者用に部屋を提供したホテル―等があった。
 来年開催に延期となった東京オリンピックでは、スポンサー辞退を決定・検討する企業が続出しているが、この緊急事態において世の中の情勢を鑑みずに?株を下げ”ないよう、そして「社会の公器」としてオリンピックよりも重要な事があると判断した表れだろう。

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